ダニー・カサス、
メキシコのルチャ・ファンを魅了してやまない逞しくも美しい肉体、爽やかなマスク。
会場の視線を一身に浴び、今が盛りの若い肉体は一層活き活きと輝くのだ。
だがダニーのナルシシズムを謳歌する時間は、入場後間もなく強制終了となった。
対戦相手のトスカーノの急襲により流血、瞬く間に試合の主導権を握られてしまった。
阿鼻叫喚をきわめる会場。
ちびっこファンが必死に声援を送るも、ダニーは血の海で悶えるのみ。
トスカーノはダニーより一回りも年上のベテラン・レスラーだ。
数々の団体を渡り歩き、全盛期はその端正なルックスと華麗なファイト・スタイルで絶大な人気を博していた。
そう、今のダニーのように。
トスカーノの鬼気迫る責めは、若さへの復讐なのか?それとも時代の変遷に逆らっているのか?
真っ赤なビキニ・タイツの四十男がプライドをかなぐり捨てて若い男に襲い掛かった。
12年分ダニーよりも沢山修羅場をくぐってきた男の筋肉。
時の経過を憎むがごとく維持されてきた体型が執念、いや怨念となってダニーを責め苛む。
だが、ダニーはこの試合を落とすことは絶対にできなかった。
なぜなら、これは髪切りマッチだったのだ。
どんなに甚振り尽くされても、泉のように湧き出す若い力。
トスカーノの攻め疲れを悟るや、ダニーは猛攻に出た。
やられたらやり返す!
場外でのラフ・ファイトでトスカーノも流血した。
中年の動きが鈍るのが手に取るようにわかる。
ダニーの瑞々しい筋肉が、旬を過ぎた肉体を圧倒した。
性器の形も露わな赤ビキニで苦悶に呻く四十男。
ダニーに倒されても倒されても立ち上がる。
(何故・・・どうしてアンタはそこまでするんだ・・・・・!?)
オッサン、そりゃイタイぜ、と感じていたビキニ・タイツが急に神々しく見えてきた。
年下にやられまくって無様な姿を晒すパンイチ男が格好良く思える。
(これは・・・この姿は・・・、俺の理想・・・・未来・・・・・!?)
数分後、トスカーノはダニーのジャーマンによって敗北した。
一般的にはとても40歳とは思えない見事な大殿筋を晒して。
勝ち誇る若者、坊主にされる哀れな中年。
勝負の世界とはかくも残酷なのだ。
この悲哀をもエンターテイメントにしてしまうルチャ、プロレスという世界。
ダニーは勝利を喜びながらも内心の衝撃に戸惑っていた。
(俺は本当に勝ったのか!?
今この瞬間、リングの主役は誰なんだ?
赤パン姿で髪を刈られているこのオッサンの存在感といったらハンパないじゃないか!?)
トラ刈りにされたトスカーノが立ち上がりダニーに近付いてきた。
ダニーに握手を求めてくる。
(オッサン・・・・!)
ダニーは思わずトスカーノに抱きついた。
「アンタ・・・アンタ最高だよ!」
「おう!オマエもなかなかいいレスラーだな。若造のくせによ。」
ダニーはトスカーノの股間が硬くなっていることに気付いた。
ルチャに人生を捧げた男が、死闘の末に勃起するのは当然かもしれない、
とダニーは素直に思った。
不思議なことに、自分も痛いほどにおっ勃てていることには気づかないのだった。
ダニーにとってルチャ人生のターニング・ポイントとなったトスカーノとの一戦からおよそ1年後。
またしても「闘う男とは?」という命題を突き付けられる試合をダニーは経験する。
今回の対戦相手のヴェネーノは15歳も年上。
見た目もザ・オッサンなのにいつも派手なビキニ・パンツで登場する。
少しキモく感じていたダニーは、トスカーノ戦とは逆にヴェネーノの入場時を狙って襲い掛かった。
場外、客の至近距離で年下レスラーに弄ばれる蛍光ビキニ。
その無様さたるや、自分だったら耐えられないとダニーは思う。
今日は思いっきりこのキモ野郎をギッタギタにしてやる!
若く獰猛な筋肉が持てる嗜虐性を存分に発揮した。
その結果、重ねられたパイプ椅子にパワー・ボムを食らったヴェネーノは失神してしまったのだった。
血だるま大の字の蛍光ビキニの中年。
若造に一方的にやられまくった挙句ノビてしまうとは・・・・!?
ダニーの嗜虐神が再び燃え上がる。
ドクターがリング・インしてヴェネーノを介抱しているのに、ダニーは憑かれたように中年に襲い掛かる。
「おいオッサン!テメー何だよ!やられっぱなしかよ!恥ずかしくねーのかよ!」
普段クリーンなイメージのダニーの豹変ぶりに客もざわつき始める。
(何だ!?俺はどうかしてしまったのか?どうしてこのオッサンを責めても責めても飽き足らないんだ!?)
自分を制御できず暴走するダニーの耳に、すべてを解き明かす声が届く。
「あうっふ・・・・」
ダニーは耳を疑い、そして愕然とした。
声の主、瀕死のヴェネーノを恐る恐る見下ろす。
(このオヤジ・・・感じてやがる・・・・)
十五も年下の筋肉野郎に、あられもない姿で嬲られまくり、蛍光ビキニ・タイツの中年は欲情していた。
ダニーは自分の暴走の原因をはっきりと悟った。
(俺はムラムラしているのだ・・・・!)
己の肉体と精神を尋常でないダメージに晒すプロレスという商売。
ヴェネーノのルチャ人生は、そのダメージをも快楽に脳内変換できるほどに成熟していたのだった。
その図太い人間の本性を目の当たりにして、若いダニーは発情したのだった。
それはダニーのルチャドールとしての成長、進化を意味していた。
ヴェネーノは嬲り者になって客を楽しませ、自分も愉しんでいる。
(アンタも正真正銘のプロレスラーなんだな。)
ダニーは担架で運ばれるヴェネーノをダメ押しとばかりに蹴りつけた。
(こうして欲しいんだろ?)
勃起を隠すように股間を掌で覆ったヴェネーノが控室に消えた・・・・
ヴェネーノとも魂で繋がったダニー。
最近では時々タッグを組んだりしている。
その時はダニーもショート・タイツで登場したりする。
「ちょっとまだ気恥ずかしいから時々だけどね。
見かけたら結構レアだからよーく見ておいてな!」
↓動画はこちら↓
ショート・タイツはムダ毛処理が面倒