昨年、広島に行く機会があり夕食は旅行者らしくお好み焼きでということになった。
本場で食べる「広島風」は旅情気分も手伝ってめっぽう美味かった。
グイグイとすすむビールの酔いが気持ちよくなってきた頃、突如店内に響き渡る歓声と拍手。
見るとパンツ一丁のムキムキマンが筋肉ポーズを決めている。
ああ、表の看板に書いてあったな。プロレスか。
特にプロレスには興味のない私は、ちょっとうるさくなったな、などと思いながら追加注文を吟味していた。
あれ?ちょっと待てよ、アイツ・・・・!?
あの筋肉マン、隣のアパートに住んでるアイツじゃないか!?
店は別段広いわけではなく、プロレスをするスペースとしてどうなのか、と門外漢の私ですら心配になる。
三畳も無さそうな「通路」にマットが敷かれ、半裸の男二人が対峙している。
一応レフェリーもいて見るからに窮屈そうだ。
近所で見かける若い男に激似の彼はビキニパンツ姿だ。
私の居住地は東京で、広島のこの店に登場した男が同一人物だとは考えにくい。
にもかかわらず、常に極端な軽装で肉体を誇示する近所の男と彼がどうしても重なって見える。
ある時すれ違った自転車の男が発していた「筋肉の臭い」、汗臭いとは違う生殖能力の絶頂期にある「雄」の臭い、夏の落陽にテラテラと光る尋常ならざる太さの上腕三頭筋・・・・
あの時、私は不意に湧き上がった情欲に狼狽えたのではなかったか・・・・
私はゲイではない。
・・・・・はずだ。
中年といってなんら差し支えない年齢になっても独り身ではあるが、それは都会に住む男には珍しいことではない。
自分のライフ・スタイルが性嗜好に左右されているとは考えたことすらない。
だが・・・・・
広島の夜は怪しい酩酊を私にもたらしたようだ。
そう、これは慣れない地ビールのせいなのだ。
夕陽に向かって走り去る逞しいシルエットの記憶が蘇った途端、私の陰茎が激しく勃起しているのは・・・・・
しかし私の理性が必死で組立てた推論もどきは砂城のごとく脆い。
あの男(もはや私の中で近所の男とコイツは同一人物にしか思えなかった)の対戦相手である坊主頭、こやつの飾り気のない肉体にすら私は鼻息を荒くしているのだ。
一体、私はどうかしてしまったのか・・・・・!?
お好み焼き屋でプロレス、という非常識な設定のためか、二人は当初はにかんでいるように見えた。
立派な肉体にあどけない笑顔がアンバランスで卑猥だ。
そもそも舞台設定以前に、プロレスそのものが既に非常識ではないか。
完成された肉体の男があのような恰好で組み合っている。
ボクシングにしろ相撲にしろ同じく裸の男同士の競技だが、ここまで破廉恥な空気は醸さない。
生殖器がくっきりと浮き立つプロレスのいで立ちは、意図されたものとしか思えない。
彼らは必要以上に、最大限に、男を、雄を、誇張しているのだ。
やがて試合は次第に激しさを帯びてくる。
二人の「闘い」は遊びのように見えて実は細心の注意を払って行われている。
ひとつ間違えば見物人に怪我を負わせ、店の備品を破壊するだろう。
しかし彼らは実に器用に三畳の空間で「プロレス」を繰り広げる。
「プロ」、なのだな・・・・・
ズボンのジッパーを下げて今すぐ陰茎を握りしめたい欲求に抗いながら、私は変な感慨を抱いていた。
ビキニパンツのあの男が坊主頭に絡みつかれ苦悶の声を上げる。
今風に言えばイケメンなのだろう。
顔立ちのはっきりした端正なマスクが歪む様は、性行為に咆哮を上げる獣のようではないか。
密着するはち切れんばかりの若い肉体が発する熱が、狭い店内の空気を「汚染」する。
一体誰がこの状況下で発情せずに済むだろう!?
「はうっ!」「んぐぅああ・・・・」「もーんっ!」
私たちの目の前で行われているのは、交尾なのだ。
繁殖が目的ではない、純粋に快楽を追及する崇高な儀式なのだ!
ビキニパンツが降参の意思を表示し、試合は幕を下ろした。
「マンジガタメ」アナウンスはそう告げていた。
ああ、卍固めか。イノキか・・・・
私も遠い記憶を呼び覚ます。
プロレス・・・・・
もしかして私はその甘美な響きを封印したまま生きてきたのではなかったか?
本当はいとも簡単に拘泥してしまうのを知っていて避けていたのではないか!?
下着の中に射精するという人生初の経験が、広島での夜の土産となった・・・・
東京に戻った私は、「ストーカー」となった。
もともと時間が自由になる自営業。
あの若者を徹底的にマークするのには情熱さえあれば充分だった。
思った通り、アイツはコイツだった。
奴は新宿2丁目を拠点とするプロレス団体に属していた。
広島でのあれは営業試合だったのだろう。
新宿での試合に、私は足繁く通うこととなる。
リングでのファイトは迫力が違った。
コージュという名のあの男は、そのゴージャスな見栄えもあってひときわオーラを放っていた。
敗ける試合が多かったが、それはおそらく大人の事情が絡んでいるのだろう、とだんだん私にもわかってきた。
大柄な先輩レスラーに痛めつけられるコージュは、実にイヤらしく見えた。
広島の時のように間近で見られないのがもどかしかった。
ああ、あのパンツは広島のやつとは違うな。
コージュは試合用のパンツを何枚持っているのだろう?
あれはまず既製品ではあるまい。
特注品だとしてデザインは自分で手がけているのだろうか?
自分の股間を装飾しようと企むコージュが愛おしい!
あのパンツをこの手で触ってみたい。
脱ぎたての、汗が湯気となって立ち上る股間の部分に顔を埋めたい!
私の願望はほぼ叶った。
彼の自宅に侵入した私は、洗濯籠に無造作に放り込まれていた「ショート・タイツ」を発見した。
脱ぎたてではなかったが、彼のイチモツが押し付けられていた部分は、少し発酵したような臭いが激烈に「雄」を放っていた。
そこに顔を埋め、鼻腔から雄物質を吸い込み、ついには口に含み、私は悶え狂った。
警察が部屋を開けた時、私はコージュのタイツを穿いたまま、10回目ぐらいの射精の最中だった・・・・・
「プロレスラー宅空き巣事件」被疑者の手記。
〝東拘〟拘留中の一晩に記された。
※当然のようにフィクションっす(そりゃそうだ)
タケダコージュ君。
さらに筋肉が大きくなって、実にストイックなナル道を順調に歩んでいるようですね。
ニチョーメ・プロレスってやっぱ裏ではエロいこともあるのかな~?
広島お好み焼き屋さんでの対戦相手はアベフミノリ君っていうそうです。
カワイイっすね。
実は俺の下の部屋にホッケー野郎(実業団か大学チームかは不明)が住んでいて、ちょっとドキドキなんすよ。
干してある洗濯ものとかチェックしたりしてね(変態!)
残念ながらビキニはなくてボクサーパンツばっかだけど・・・・
犯罪者にならないように自分を戒めなくちゃ(笑)
若者のビキニ姿がきちんと生きているプロレスってやっぱ素晴らしいっすね!
↓動画はこちら↓
奇跡のガッチビ↓コージュ君の過去記事はこちら ケースケ君も出てます↓
「インディーの若武者たち」