「いよいよ明日、黒杭との最終決戦に臨むため、地下に乗り込む。」
山奥の特訓場のメイン・リング、コンクリ打ちっぱなしの箱型の建物内で、長谷部が宣言した。
長谷部も掟に則って黄色いショートタイツ姿だ。
アスリートには程遠い中年体形ではあるものの、がっしりとした骨太な体格のせいか、リアルな男のエロさを醸している。
「光の戦士の5人には、ここで最後の儀式に参加してもらう。」
ライディーン竜崎翁が頷き、後を続ける。
「この戦いは、男の情念のぶつかり合いじゃ。
最期には、より貪欲に性をさらけ出し貪った者が勝つじゃろう。
敵は化け物並みの、いわば絶倫獣じゃ。
しかし、我々の雄性がそれに勝てないはずはない。
おぬしたちのプロレスに寄せる溢れんばかりの情念を、今こそ解き放つのじゃ。
この道場が設立された当時の、〝雄の儀式〟を今夜執り行う。」
かつて地下プロレスの神と謳われたライディーン竜崎。
顔だけ老人で身体は筋肉マン。
長い白髪と白い髭の効果で一層神がかった風貌の竜崎の言葉を、
緒方、藤堂、桜井、大岩は神妙な面持ちで聞き入っている。
4人の背後の壁際には、鷲号や権田、朝倉をはじめオネエトリオ、ラー、ゴリ子、新垣、そして包帯姿の向井と太助、カムイとパセリも、もちろん田代誠二、その他の地下プロレスラーたち、THPWの関係者全員が揃っていた。
もちろん、皆ショートタイツ姿。
パセリが徹夜続きでで全員分作ったのだ。
「ここにいる全ての者が心を一つにして立ち向かわなければ、強大な悪には勝てん。
今宵、〝白き血判〟を皆に記してもらう。」
竜崎翁の合図で、戦士たる5人がリングに上がる。
「それでは、・・・」
「あっと、すみません!忘れてました。
特別な人をお呼びしてたんだった。」
竜崎は儀式の開始を遮られて少しだけ憮然とした表情になった。
口を挟んだのは長谷部だった。
「も、申し訳ありません。
でも、彼を連れてくるのに犯罪スレスレまでやったんで・・・・」
長谷部の合図で道場に入ってきたのは、阿木銀次郎だった。
「銀次郎・・・・!?」
「オマエ!な、なんでここに・・・・!?」
桜井と藤堂が驚きの声を上げる。
フロントに「酒」と染め抜かれた白いタイツ姿の銀次郎が頭をかく。
「いや~、配達中にいきなりクスリ嗅がされてバンに拉致されて・・・・
酒屋の営業妨害だよな。
でも、長谷部さんに事情を聞かされて、俺は来なくちゃって思った。
桜井・・・・、オマエ、やっぱり自分の道を見つけたんだな。
ホント良かった。
でも・・・大変なことになっちゃってるんだっけ・・・
大丈夫!オマエなら乗り越える。
俺はお前の強さをよーく知ってる。」
「銀じ・・・・ろ・・・」
桜井の頬を大粒の涙が伝う。
「おー、藤堂!久しぶりだな!
お前とのあの雨の絡み合いは忘れられねーぜ。
今だにネタにしてるぜ!がはは!」
地上メジャー団体を蹴って、たった一人地下プロレスに身を投じた桜井。
銀次郎を連れてきたのは、桜井をスカウトした長谷部の気持ちだった。
「おい長谷部、段取りが台無しじゃわい。
まあよい。
この際、儀式の前に皆心の内を語り合うのもよいかもしれん。
いや、これも立派に儀式の一環じゃわい。」
一旦リングに上がった戦士たちが、皆の輪に入っていった。
抱き合う桜井と銀次郎。
「おー、オマエそのタイツどうしたんだよ?」
「なんかパセリとかいう人が勝手に作ってくれてたみたいなんだよ。
ショートタイツは初めてだったから、ちょっと照れるな。」
「あら、ちょっとー。
アナタが地上で桜井ちゃんのタマタマを弄んでたヒト?
やだー、いい男じゃないー。
嫉妬しちゃうー。
過去に嫉妬するオカマよ、アタシは。」
たちまちオネエ軍団に囲まれる銀次郎。
「ちょっといいか?」
カムイが藤堂のタイツを引っ張って隅に連れていく。
「これ、鮫島から・・・・・」
カムイが手渡したのは、紫の小さな布だった。
「こ、これは・・・?」
「鮫島のタイツの股間部分。」
藤堂の顔が見る間に真っ赤になっていく。
「あ、あの野郎・・・・!
どこまで俺を愚弄する気だ!
この期に及んで俺が惑わされると思っているのか!」
カムイは藤堂の眼を真っすぐに見た。
「・・・・いや、そういうことじゃないと思う。」
「えっ・・・?」
カムイの眼から涙が一粒落ちた。
どんなときも感情を表にださない能面男が泣いている・・・・?
「カムイ・・・・?」
「藤堂、好きだ。」
「・・・・・!?」
カムイの気持ちには気付いていたのかもしれない。
だが、気付かないふりをした。
何故なら・・・・・
「解かっているんだ、藤堂。
お前の心はいつだって鮫島一色だ。」
「そ、それは違うぜ、カムイ・・・」
「もう誤魔化すな。」
「え・・・・」
「今度の闘いで決着を着けるんだ。
お前の心に。
曖昧な気持ちで挑んだら、お前は鮫島に勝てない。
このタイツの切れ端は、鮫島の送った塩だ。
奴も真剣なんだ。
悔しいけど・・・・・」
「カムイ・・・・」
「嗅げよ・・・・、鮫島の股間の臭いを。」
タイツ・・・・鮫島の・・・・その股間の部分・・・奴の男自身が触れていた部分・・・・・
小さな紫の布を持つ藤堂の腕がわなわなと震えだした。
そしてゆっくりと、鼻に・・・・
「藤堂!
そのタイツ、お前に託したぞ!」
後ろから太助に急に声をかけられ、藤堂はさっとタイツの布を自らのタイツに入れた。
「あ、ああ、太助。
お前のタイツで闘うのは2度目だな・・・・ははは・・・・」
乾いた笑いで動揺を隠す藤堂の股間には、カウパーの染みが滲んでいた。
「竜崎、とうとうこの時が来たな。」
「ああ、鷲号、儂にとっては積年の恨みをはらすチャンスじゃ。」
「・・・やはりお前はあの時のことを恨んでいるのか。
では、私のことも許せないだろうな。
お前を袖にした憎い男。
もしも・・・・もしも時が戻せたら・・・・」
「よせよせ、儂はお前と黒杭がチチクリあってる様を想像して手淫に励んだものじゃ。
ある意味、儂の地下プロレスラーとしての成功は嫉妬の炎によるものじゃったかもしれん。
にしても、おぬしのショートタイツ姿、イタイな・・・・・
なんじゃそのヨボヨボの情けないボデーは。
百何の恋も一辺に醒めるわい。」
「な・・・、し、失敬な・・・・・、私はそもそもレスラーじゃないのだから・・・・」
「ん?この臭いはもしや加齢臭?」
「な、なんだと、この筋肉ジジイめ!」
竜崎は色をなす鷲号の腰をそっと抱いた。
「今度、筋トレを一緒にやろう。
ジジイ・マッチョはこれからの時代、流行るぞ。」
「竜崎・・・・・」
鷲号の男根が、十数年ぶりに疼いた。
加齢臭の風下で苦笑いをする若い二人。
大岩と田代は穏やかな表情だった。
「俺、競パンフェチだけど、自分用のショートタイツって初めてだ。」
「似合ってる。俺とお揃いのグリーンにしたんだな。」
「うん。すごいよ、このタイツ。
前布なしの競パンよりエロい感触だ。」
「パセリさんのタイツだからな。
今度、このタイツ穿いたままSEXしよう。」
「うんうん!やろうやろう!」
抱き合う二人の男根同士がタイツ越しに激しく摩擦する。
誠二の涙は、顔だけでなく股間もびしょびしょに濡らしていった。
お互いの身体を密着させて、皆を微笑んで見守る權田と新垣。
松葉杖を放り投げてポリスマン・ポーズを敢行し、あえなく転倒して皆の笑顔に囲まれる向井。
男根の構造について熱く語り合うラーとパセリ。
酒やオードブルがあったら、まるで男だらけの立食パーティーだ。
リングの裏手、皆から少し離れた場所に、
向かい合う赤いタイツと白いタイツ。
白タイツは松葉杖をついている。
「大輔・・・・」
「大悟・・・・」
時が戻せたら・・・・
鷲号は言った。
だが、決してリセットされない時間の堆積の表層で、
誰もが積み重ねた土壌に足を取られもがいている。
そして新しい地層が生まれ、両足はますますそこから抜け出せなくなるのだ。
人生とはそんなものなのかもしれない。
たとえそうだとしても、今この時を、刹那を生きる男たちにとって、地上にはあくまで澄み切った空があるだけだ。
自らが重ねる時の層は、とんでもない泥沼かもしれない。
でも、それはまだ無いのだ。
時は巻き戻せないと同時に早送りもできないのだから。
つづく
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「レスラーズ・ハイⅡ」を楽しみに読ませていただいております。
俺は年輩者が好きなので、ライディーン竜崎がかつてないほど全身(特に竿・玉・穴の三点)をぼろぼろになるまで責められ、悶絶の果てにいろんな物をリングにまき散らし公開処刑されることを期待しています。
男が強ければ強いほど、やられるシーンは逆にすごく興奮します。
神とまで呼ばれた伝説の老レスラーの哀れな醜態・恥態にまみれた最期を読みながらセンズリしたいです。わがままを承知でリクエストさせてください。
これからもどうぞwashigoさんのペースで。応援してます。