長谷部から知らされたTHPWとブラックパイルの最終決戦の概要はこうだ。
5対5の勝ち抜き戦。
5人の戦士を先に倒した方が勝ち。
控え選手の試合介入はNG。
ただしリング外はその限りではない。
凶器の使用は基本認められる。
10カウントKO、失神等による戦闘不能状態をレフェリーが見た目た場合、の2点のみで試合が決する。
射精は何度しても敗けにはならない。
会場は地下施設メインリング。
ブラックパイルのメンバーはすでに発表されていた。
先鋒 不破晃司
次鋒 グドー
中堅 イ・サンウ
副将 鮫島周星
大将 黒杭大凱
5人が5人ともTHPWのファイターをリングに沈めたことがある。
不破はポリスマン向井を「華の間」にて下した。
緒方大輔のリングでの初射精もこの男が関与している。
グドーはレスキュー太助、桜井勇治の急所を弄んだ。
サンウと藤堂の試合も、事実上サンウの勝利と言っていい。
鮫島は藤堂を絞め落とし、地下プロレスを追わせた張本人だ。
そして黒杭は緒方大輔に完全勝利し、地下施設をTHPWから奪い取った。
つい最近の対戦でも緒方を歯牙にもかけず、その強さを見せつけた。
(はあぁ~・・・・)
田代誠二は内心ため息をついた。
(全然勝ち目無いじゃん・・・・)
大体、THPWには戦士を5人擁立することさえ難しい。
權田は、朝倉との対戦による負傷が思いのほか深刻で、おそらく無理。
向井はまだ入院中。
それに、
(なんだって鮫島がブラックパイル軍にいるんだよ?)
誠二は唇を噛んだ。
もともと光の戦士としてTHPWに招かれたのでは?
(やっぱりあんなやつ信用しちゃダメだったんだ。)
THPW事務局では、皆が決戦の概要のコピーを見つめて黙り込んでいる。
誠二は恐る恐る藤堂を見た。
藤堂はレジュメから顔を上げるところだった。
そしてびっこをひきひき長谷部の元に向かった。
「俺を鮫島と当たるようにしてください。」
新垣や権田と話していた長谷部が振り返る。
「・・・・・大丈夫か?」
黙って頷く藤堂。
「鮫島の前にサンウもいるぞ。」
包帯でぐるぐる巻きになってミイラ男のようになっている権田が呟く。
「権田さんの心配はごもっともです。
でも、サンウのことも含めて、俺は今度こそ鮫島と決着を着けたい。
これは、THPWのため以上に、俺自身の闘いなんです。」
藤堂、鮫島、サンウの複雑な三角関係はリングの上で解消されるのだろうか?
「俺は・・・・
俺はグドーとやりたい。」
桜井が独り言のようにつぶやく。
「俺の全金玉力を賭けて、アイツと闘いたい。」
早くも半勃起になって爛々と眼光を発する桜井の後ろで、オネエトリオが涙ぐむ。
「そうよ・・・桜井ちゃん。
アタシたちが鍛えた金玉はゼッタイ負けないんだから!」
長谷部は桜井を見据えて力強く頷いた。
「アイツに対抗できるのはお前だけだ。」
しかし・・・・
と長谷部は内心頭を抱えた。
こちら側で戦力と呼べるのは、藤堂、桜井、そして・・・・
そして緒方だけだ。
たった3人で5人の強敵を相手に勝つことができるのだろうか?
しかも3人は手負いの状態だ。
「俺が行きます!」
大岩瞬だ。
「解かってます。
俺がブラックパイルのレスラー相手にならないことは。
でも、藤堂さんたちが闘う前に少しでもダメージを与えられたら・・・・
長谷部さん、お願いします!」
大岩の相方である田代誠二は驚いた。
「瞬!
だめだよ!
殺されちゃうよ!」
「誠ちゃん、俺も男だ。
行かなきゃならないんだ。」
「瞬・・・・・・」
泣き崩れる誠二の肩に手を置いて、大岩は長谷部に向き直った。
長谷部は黙って頷いた。
(大岩・・・死ぬなよ・・・・)
だが、まだ4人だ。
「俺は闘えるぜ!」
陽気な声に皆が振り向く。
ポリスマン向井だった。
常にキメキメで颯爽と登場する向井。
今回もそのヒーロー然とした姿を想像した一同は落胆した。
權田以上のミイラ男状態の包帯、松葉杖すらついている。
ただ、そんな状態でもネイビーのショートタイツ姿だった。
「お願いだ。
俺も出してくれ!
あのヤク中野郎に一矢報いなきゃ警察の威信が保てねえ。」
長谷部は首を振った。
「向井、退院おめでとう。
だが、そんな身体で試合は無理だ。」
地下施設の廊下を、コツコツと靴音が近づいてくる。
足音にさえ年季と威厳が備わっているような大きな影が、事務局のドアを開ける。
「ワシが闘う。」
ライディーン竜崎翁だった。
地下プロレス最終決戦。
THPWのメンバーが決まった。
先鋒 大岩瞬
次鋒 桜井勇治
中堅 フラッシュ藤堂
副将 ライディーン竜崎
大将 緒方大輔
つづく
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