とうとう職場に「週エロ」が送られてきた。
今回の配送員はビルダー系のスキンヘッド。
このクソ寒い中、ピッチピチの半袖シャツからコブのような上腕二頭筋を突き出している。
俺はその実生活からは完全に浮いている筋肉美を見た時、封筒の中身を察してしまった。
マジかよ、会社だぜ!?
「サインをお願いしマッスル!」
スキンヘッドはイカツイ顔で、ギャグなんだか言い間違いなんだかよくわからないことを言って、色々質問しようとしていた俺を封じた。
非日常的な逆三角形がオフィスの出口に消えた後、俺はデスクの引き出しを乱暴に開けた。
ふざけんなよ!
こっちは仕事中だっつーの!
封筒を引き出しに投げ入れ施錠した。
パソコンの画面に戻り、中断させられた作業を再開した。
3分後、デスクは開けられ、俺は封筒を手にトイレの個室に駆け込んでいた。
なんなんだよ~。
どこのどいつが何のために俺に週エロを送りつけてくるんだ?
得体の知れないものが迫っている気がして、俺は便座の上で身震いした。
俺が地下プロレスファンだと知っている誰か・・・・
そんな奴は表の生活圏には存在しない。
俺は普段はプロレスのプの字も臭わせないよう細心の注意を払って暮らしている。
ということは、地下関係者の誰か?
いや、こんな手の込んだイタズラをする者は思いつかない。
じゃあ、一体他の誰が俺の性癖を知っているんだ?
なんの手がかりもない雲をつかむような推理は、封筒の中身を見た瞬間たちまち霧散した。
えーっ!!!
タックル・パワーが・・・・再起不能・・・・・!?
2017年現在、日本のエロレス界を牽引するトップレスラーと言えば、九分九厘タックル・パワーの名が挙がるだろう。
ラグビー仕込みの逞しくもエロい身体。
プロレスというある意味特殊な闘いの中に、男の情念を追及して止まない求道者。
そのタックルが・・・・・
失神KOの末、再起不能の危機って・・・・・!?
確かタックルは因縁の宿敵ザ・エヌと最終決戦に臨んだはずだったけど・・・・
その試合で半殺し以上の凄惨な責めを受け、ついにリングに沈んだのか・・・・・
こ、この表紙・・・
タックルに意識はあったのだろうか?
もはや闘争本能のみが半死半生の身体をかろうじて動かしていたのでは?
だってこのフル勃起・・・・
これは雄の本能が最期を悟った証拠じゃないのか?
もちろん地下プロレスラーであるタックルは勃起体質ではあったけれど、この勃ちは尋常じゃない。
ロープの硬いワイヤーに押し付けられても全く衰えていない。
ザ・エヌが、己の身体に非情で非道なトドメを刺すことを、この時のタックルの本能は予感していたのかもしれない。
なんて荘厳な姿なのだろう!
そして、なんとエロい姿なんだ!
担架で運ばれたというタックルの容体は気がかりだけど、俺はしばらく敗北する男の美しさに酔いしれた。
社員便所の個室で。
あ~、仕事中だけどもう我慢できないよ~。
ここでヌかずに仕事に戻るなんて無理!
俺はズボンのベルトを外し始めた。
床に落ちた週エロのページが捲れた。
あーっ!!!
こ、これは・・・・・!?
長きに渡って抗争を繰り広げてきたタックル・パワーとザ・エヌ。
その最終決着が着いたということで、過去の二人の試合を振り返った記事らしい。
この試合、覚えてるよ~!
あれも酷かった。
有刺鉄線の絨毯にボディースラムで投げられたタックルは、完全に身動きが取れなくなった。
標本状態のタックルに、ザ・エヌはレッグシザースで更なる責めを与える。
脱出しようともがくタックルのタイツに有刺鉄線が突き刺さり、ついには引き裂いた・・・・・
パープルタイツが見る間にボロボロに引き裂かれていく衝撃。
闘いの装束であるショート・タイツが破られる屈辱。
この試合はタックルが奇跡的な逆転劇で勝利したけど、本質的には、タイツが破られた時点でタックルは敗北していたんだと思う。
確か、試合後のインタビューでも本人がそんなようなことを言っていたはずだ。
血まみれのボロボロタイツが痛々しかった。
だけど超エロかった!
ケツなんかほぼ見えちゃってたもんね。
前もモッコリがかろうじて引っかかっている程度だったし。
ああーーーー!!!
もうダメ!
すぐヌかなきゃ、頭の血管が切れるよ!
俺は生まれて初めて職場のトイレで自慰をした。
2発出した。
結局その日は仕事にならなかった。
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