「よし!誠二、ここだ!」
「行きますよ!長谷部さん!」
〝水の間〟を形作る長方形の向かい合った長辺、それぞれの客席前の通路に立つ二人を結ぶ線上には、桜井とグドーが水しぶきを上げていた。
田代誠二は持っていた小型ドローンを、向かい側の客席にいる長谷部に向かって操作を始めた。
ドローンには太いロープが繋げられていて、長谷部の位置に到着すると丁度桜井たちの頭上にロープが張られた形となった。
近くにいる観客は、二人がしようとしていることを理解し、期待のこもった目で成り行きを見守った。
桜井を救出する。
長谷部が計画を思いついた時、試合への介入はどうなのか?という意見がTHPWスタッフの中からも出た。
「かまうものか!もともと黒杭どもの設定したクソ会場だぞ。こっちが手を出してやっと互角の状況だろ!」
誠二と長谷部は桜井が掴めるようロープを緩めていった。
「桜井!掴め!」
「桜井さん!」
玉潰しの快感地獄に溺れながら、人間鹿威しのように水面上を立ち上がっては叩き付けられている桜井。
完全に脱力していた両腕が弱々しく頭上に上げられる。
長谷部たちの声は届いている。
グドーが水中に潜ると、桜井の上体が水面に立ち上がった。
上に伸ばした両腕の先がロープに触れる。
「そうだ桜井!掴め!」
掌は、地獄から脱出するための蜘蛛の糸をかすめ空を掴んだ。
「頑張って、桜井さん!」
田代誠二の悲痛な叫びが観客の落胆のため息にかき消されていった。
「大輔・・・・、生きていたんだな。」
權田に馬乗りになっていた朝倉が立ち上がった。
「海に逃げたって聞いてたけど、怪我もしていたし、素っ裸だし・・・・」
「生きてるさ。」
緒方の硬い声が朝倉の言葉を遮った。
「権田さんをこんな目に合わせて・・・・、お前、本当に腐っちまったようだな。」
「だ、大輔、ち、違うんだ・・・・」
「違わない!」
競パンからはみ出したケツタブにグッと力が入る。
「お・・・緒方・・・・・」
ボコボコに腫れて激しく面変わりした権田がはい出してきた。
小便が湯気を立てている。
「権田さん・・・・ご無沙汰です。
すまない、ちょっと来るのが遅かった・・・・」
「緒方・・・・こ、こいつは・・・・まだ・・・・・ま・・・だ・・・・」
權田はそこまで言うと、バシャっと音を立てて自分の尿に倒れて意識を失った。
緒方は俯せに倒れる権田に歩み寄り、ケツに食い込んだ黒競パンを直した。
そしてゆっくりと朝倉を振り返った。
「お前が黒杭に犯されてしまったのは助けられなかった俺の責任だ。
悔やんでんも悔やみきれない。
だが・・・・
だが、お前が黒杭に溺れたのはお前自身の問題だ。」
真っすぐに朝倉の眼を見つめる。
朝倉はその視線を受け止められず目を伏せ、唇を噛んだ。
「俺も黒杭に犯られた・・・・
正直・・・・正直ものすごい快感の大波が押し寄せ、俺は飲み込まれてしまった。
あれは昇天ではなく、深い海溝へと沈んでいく感覚だった。
だが・・・・俺は溺れなかった。
快感地獄の深海から這い上がったんだ。
あの、全てを無に帰してしまう快楽の津波より、俺にとっては怒りの炎のほうが勝ったんだ。
俺よりも強くエロい男が存在することへの怒り。
そして・・・・」
緒方は俯いた。
握りしめた拳がぶるぶると震えている。
「・・・・・黒杭を呼べ・・・・・・」
「え・・・・?」
緒方は顔を上げ、吠えた。
「黒杭大凱を呼べーっ!!!」
叫びは狭いコンクリの空間に汚いエコーを響かせた。
「よし!掴んだぞ!」
視界も覚束ないだろう状態の桜井がようやくロープを掴んだ。
「引き上げるぞ!」
「はい!」
長谷部と誠二がロープを引っ張る。
桜井の身体が上昇すると、電気アンマをかけていたグドーの姿が水中から現れた。
「ぬう!邪魔をするではない!」
グドーは桜井の両足を引く手に力を込め、股間へ激しくヴァイブを送り始めた。
「ああっ!おおおあああ!!!!」
絶叫する桜井。
「誠二!引けーっ!!!!」
「だ、ダメです・・・!重すぎです!」
電気アンマで繋がった二人が宙に浮いたまま制止した。
「さーくらーいー!極楽往生しやがれーっ!!!!」
グドーの拷問電気アンマが水面すれすれで盛大な水しぶきを上げる。
海象がのたくっているような野性の迫力だ。
「ちょっと!アンタたち!もっと引かなきゃダメじゃない!」
危うくロープを離しそうになった誠二を助けたのは、山の特訓場のオネエトリオだった。
「アタクシ達が仕上げたサクライ君になにすんのよ!」
向かいを見ると、長谷部側にも助っ人が加わっていた。
観客だ。
誠二の後ろにもロープを引こうと続々と人が集まってきている。
「いいぞ!引けーっ!」
海象に捕らえられた桜井が再び上昇を始める。
「ぬぬぬうーっ!逃がさんぞーっ!」
グドーの腹筋が盛り上がる。
上体を起こしたグドーは桜井の足をを掴む手をパット離した。
巨体に似合わぬ身のこなしで空中回転すると、右手で桜井の股間をむんずと掴んだ。
「急所クローッ!!!!!」
玉砕坊主の叫びとともに、睾丸がぐにゃっと握り潰された。
桜井の眼がカッと見開く。
「ぐはっぁあああああああああああおおおおおっ!!!!!!!」
桜井の最大限に勃起した男根がとうとう噴火した。
大量の精子が青い競パンを漉して噴きだし、ボタボタとグドーの顔面に降り注いだ。
「んぬう~うう!おおあ~!よい味だぞーっ!」
グドーは滴るザーメンを巨大なナメクジのような舌を受け止め、舌鼓を打った。
股間を掴む手の握力が弱まり、雄汁で滑り落ちていく。
グドーは最後に競パンのVの頂点に捕まった。
スピードが、引きちぎられんばかりに伸ばされた。
勃起男根に引っかかっていた競パンはやがて桜井の足を脱げ落ち、グドーとともに黒い水面に墜落していった。
ドボーン!
水没したグドーは二度と浮き上がってこなかった。
全裸でロープにぶら下がっていた桜井も、プールに堕ちていった。
柄物の競パンを穿いた大岩が、必死で泳いで桜井のもとへ向かうのが客席から見えた・・・・・
「狭い部屋だ。
大声を出すな。」
黒杭大凱だった。
光沢のある黒いティア。
失神する権田を中心に、緒方、朝倉、黒杭が正三角形に配置された。
小便の臭気がコンクリの空間を満たしていった・・・・
つづく
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