不破晃司、
かつては地上メジャー団体に所属し、緒方大輔にリング上で初めて射精させた男。
黒杭組の手下でありながら純朴な後輩の姿を装いTHPWに入り込んだスパイ野郎。
あの運命の日、黒杭大凱に敗れた緒方にさらに陵辱の限りを尽くした人非人。
そして今、薬物中毒者の姿で自分の目の前に現れた。
正義を愛し正義に生きるポリスマン向井にとって、不破のような外道は叩き潰さねばならぬ害虫だった。
「この俺とサシで勝負だと?キサマのような卑怯者の魂胆はお見通しだ。どうせ汚い仕掛けやら極道の助っ人やらがあるんだろ?」
向井は奇怪なデザインが施された狭いホールを見まわした。
「ふう、お巡りさんってのは疑い深くていけねえ。ここの腐り具合は俺らもアンタがたも似たようなもんだろ?」
自分の心臓のあたりを撫でながら不破が黄色い歯を見せる。
「正真正銘、俺とお巡りさんだけだぜ、このリングには。」
「ヤク中が、俺に勝てると思っているのか?笑わせるぜ。」
「ヒッヒッヒッ、お巡りさんはケーサツの特殊訓練を受けてきたんだってな。俺に言わせればそんなのは屁だ。なーんにもこの世界のことがわかってねえ。なのに親方日の丸でイバッテいやがる。オメデタイこった。」
純白のタイツの股間を揉みながら、濁った眼が向井に焦点を合わす。
「お巡りさん、クスリは素晴らしいぜ。俺の精神世界をより豊饒に満たしてくれる。それだけじゃねえ。一発キメテからのプロレスがまあ気持ちいいのなんのって。だからさ、アンタをわざわざ連れてきたってわけ。俺の大っ嫌いなケーサツカンを。わかる?」
カーンッ!
どこから音が出ているのか突然ゴングが鳴った。
向井は思わずファイティングポーズをとる。
「そうだ、仕掛けはあったな。いくつものカメラがこのリングをあらゆる角度から撮ってるぜ。もちろんお客様にお見せするためにな。」
不破がノーディフェンスで腕をブラブラさせながら間合いを詰めてくる。
目にも留まらぬ速さでタックルを仕掛ける向井。
「うがぁっ!」
鼻血を飛ばしながら倒れたのはなんと向井だった。
「おクスリの力はすごいね~。全部見切れるぜ。アンタの動き。」
「くっ・・・・・」
鼻を押さえたまま立ち上がれない向井に、ヘラヘラ笑いの不破がゆっくり近付いていった。
「さあー、地下特設リング〝花の間〟で突如始まったポリスマン向井VS不破晃司の一戦。警察代表の向井といわばチンピラ代表の不破、おそらく初対面でありながらすでに因縁まみれの二人といった感がありますが、ヤマモトさん、この試合の見所とはそんな二人の背景にありそうですね。」
「そーですね。ある意味〝光と闇〟の闘いにおける象徴的な試合と言えるのではないでしょうか。それからぜひ注目したいのは、ポリスマン向井の特殊訓練によって作り上げられた所謂エリート地下プロレスラーとしての力量と、薬物によって潜在能力が全開となった不破の非人間的なパワーとの対決、そういった構図でもあるということですね~。」
「なるほど~。申し遅れましたが今回実況を担当させていただくのは私、五所川原、解説にはスモールアイアン・ヤマモトさんをお迎えしてお送りいたしております。あー、向井選手、鼻血がひどいようですね~。文字通り出鼻をくじかれたかたちです。」
「向井はもう少し慎重になるべきでしたね。不破の薬の効果を侮っていたのと、彼の人間性、いや非人間性についてもっと警戒しなければいけない場面でした。」
「やってくれるじゃねえか・・・・・このチンピラが・・・・・」
向井の端正なイケメン顔が雄の獣の表情に変わる。
まるで瞬間移動したかのような超高速の動きに、滴る鼻血が取り残され残像の下に落ちた。
バスッ!
ローリングソバットが不破のにやけ面を捕らえる。
倒れ込む方向に今度はハイキックが炸裂し不破の身体は反対側に傾いた。
すかさず掌底の正面突きがアッパーに決まる。
よたよたと後退しながら倒れる不破はロープにもたれ掛かることでようやく立っていた。
ダッシュで走ってきた向井のドロップキックがスローモーションで不破の顔面を変形させた。
勢いでロープの外に吹っ飛ばされた不破の後頭部が自らが描いた絵の壁に激突し、リングと壁の間の狭い空間にどさっと落ちた。
「思い知ったか、ヤク中野郎!」
鼻血が止まりかけた向井は余裕のフットワークで鋼の筋肉を跳躍させている。
「すごい歓声です!地下大ホールに設置された超大型スクリーンには向井のネイビーのショートタイツのバックが大映しになっています。POLICEMANの黄色いロゴが眩しい!鍛え上げられた大殿筋が一層セクシーに強調されています。会場のお客さんは大喜びだ!いつ始まるともしれないゲリラ興業に備えて会場で待っていてくれているファンの皆さんですからね~。しかも9割がたは光の戦士押しの方々。向井の華麗なファイトに狂喜乱舞といった雰囲気です。ブラックパイルが管理していたころには不破選手の手下たちに随分ひどい目にあわされてきたお客さんが多いでしょうから、この展開はたまらないっといった感じでしょうね~。」
「はい。あの時会場のならず者を一掃したのは向井率いる警察隊でした。お客さんにとって向井は暗黒時代を終わらせる救世主のような存在なんでしょうね。」
「さあ、所謂ラリっている状態の不破選手。向井選手の攻撃で少しは目が覚めたのか、それとも早くもグロッキーか!?」
リングと壁の隙間にうつ伏せに倒れていた不破がもぞもぞと動き出した。
ふらふらと立ち上がった不破の口からは血が流れ出していた。
リングの上の向井を濁った眼で一瞥すると、血まみれの歯を剥きだして薬物中毒者は微笑んだ。
「全然痛くない・・・・・」
薬物効果が痛覚を鈍らせているのだろうか。
腫れあがった顔面を全く気にする様子もなくリングに上がる不破。
「お巡りさん、そんなんじゃ俺たちは倒せないよ。ケーサツってのは結局は詰めが甘いんだよな。だから俺らは助かってるんだけどさ。ヒヒヒヒ・・・・・・」
ポリスマン向井は一瞬面食らったような表情を見せたが、すぐに精悍な警察官の顔に戻った。
「なるほどな・・・・。そういうことか。これは退治のしがいがある害虫案件だぜ。完全に叩き潰せばいいってことだな。それしか駆除の方法がない。」
言葉が終るか終わらない内に向井は例の〝瞬間移動〟で不破のバックに回っていた。
フルネルソンがぼーっと立っていた不破の身体をあっという間に捕まえた。
「ぐぐぐ・・・・・」
「どうだ、このまま堕として害虫駆除完了だ!その後はいい子になってもらうために更生施設でしばらく暮らしてもらうぜ。」
向井の鋼の筋肉が不破の両腕をガッチリとホールドし、首をギリギリと圧迫する。
「おらっ!」
その体勢のまま左右に乱暴に揺さぶられたのでは堪らない。
「ぐびっぐ・・・・・」
気持ちの悪い音を発して不破の口から血の混じった涎があふれ出す。
滴は純白ゴールドのタイツにピンク色の染みを作った。
「うおらっ!いけない子はお寝んねの時間だぜ!」
木偶のように揺さぶられる不破の白地に金のストライプの入ったタイツの股間が膨らみ始めた。
「あがが・・・あが・・・・き、気持ちいい・・・・・・」
思いがけない呟きにギョッとする向井。
「な、なんだと・・・・・!?」
「お巡りさん、大きくしてるっしょ。俺のケツに当たってるんだよね~。気もいいいいっ!」
「な・・・っ!?」
向井のプロレス魂は悪を成敗することで高まるように訓練されている。
勃起しやすいのは地下プロレスラーとして不可欠な資質だ。
不破を仕留める目前で確かに向井の男根は完全勃起していた。
白タイツのケツが向井の硬くなったモノを迎えるように押し付けられる。
「うーん、サイコー!ケーサツマラでケツを慰めるのもいいもんだな!お巡りさん、なかなかデカいじゃん。」
「キ、キサマ・・・・・!」
怒りに燃えた国家機関マッスルに一層力が込められる。
「さっさと堕ちやがれ!この害虫が!」
「ふぐぐぐ・・・・」
反社会的ケツ肉が向井の警棒をあざ笑うかのように愛撫する。
白タイツがネイビーの膨らみに擦りつけられ、いつしか潤滑油のようになった二人の汗が、薄い布を性感を攻撃する武器に変えた。
「こ、この野郎・・・・・うう・・・ぐぐ・・・・」
想定外の不破のケツ捌きに不覚にも感じてしまう向井。
タイツを濡らす汗には、カウパーも含まれていたか?
密着する筋肉野郎の隠微な声が、奇怪な花の内部を模した部屋にこだました。
つづく
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