暗闇に切り取られた輝く入り口をくぐると、そこはリングに一直線に続く花道だった。
ウワーッという大歓声。
何百という目が、自分の身体を品定めする。
ショートタイツとニーパッド、リングシューズのみの姿は、なにひとつ誤魔化すことなく男の身体を見せつける。
男根が、緑色のタイツの中で疼きはじめる。
大岩瞬はプロレスラーとしての喜びを思いっきり享受した。
レスラーの身体は、レスラー自身の男道を文字通り体現する。
このカラダひとつで闘いに臨むのだ。
どうだ、このボディー。
お前ら羨ましいか?
もっと見ろ!もっとため息をつけ!
この地上でもっともエロい姿にひれ伏すのだ!
プロレスラーになった男にしかしか歩くことが許されない、モッコリ・ランウェイ。
この道がたとえ死への滑走路だったとしてもかまわない。
破滅に突き進む男の雄姿はさらにセクシーさを増すのだから。
大岩は昨夜見た夢を想い出す。
ホテルらしいゴージャスなエレベーター。
映画「シャイニング」のワンシーンが再現されているらしい。
あのエレベーターの扉が開くと夥しい血液が溢れだすのだ。
だが、夢の中で洪水を起こしたのは、真っ白い粘液だった。
ザーメンの奔流はカメラに到達し、画面を真っ白く塗りつぶしていった。
「儀式」で大岩は桜井勇治とタイツを取り換えた。
蒼いタイツは生き物のように大岩の睾丸を圧迫し、捻じり、愛撫した。
おそらくそれは大岩の脳が創りだした幻想だっただろう。
だが、プロレスラーのタイツに宿る記憶は、プロレスに生きる男にとって紛れもなく現実だった。
桜井の青タイツを穿き、その桜井にケツを揉まれ、兜合わせに男根が激しく擦り合わされた時、
大岩にもたらされた絶頂感は、己のプロレスラーとしての人生をすべて肯定された悦びだったのではなかったか。
精液にまみれたスパーリング、いや、あれは互いの身体を一体化せんとするがごとく、溶け合おうとする行為だった。
数メートル先では、緒方と藤堂が絡み合っている。
やがて4人は合流し、さらに竜崎が加わり5人はネトネトにもつれ合った。
リングの外にいた男たちがエプロンサイドにズラッと並ぶ。
皆、ショートタイツの股間に手を当て自身の男根をまさぐっている。
そして全員がリング内に射精した。
男達の精液が潤滑油になったかのように、5人はさらに激しく絡み合う。
大岩自身も何度射精したかわからない。
桜井のタイツがケツに食い込み肛門を刺激する。
それはまるで桜井自身の指で菊門をまさぐられているかのようだった。
緒方のタイツを穿いた藤堂の股間に顔を埋める。
倒錯した快楽が大岩の理性を粉砕する。
エプロンに立つ田代誠二と刹那目が合う。
身体の中心から快感が皮膚を食い破って迸る。
いつしか大岩瞬は意識を失った。
夢は、儀式の名残だろう。
俺は生まれ変わった。
もう死ぬことなど恐るるに足りない。
むしろ、リングで殉死してこそ本望だ。
誠二、俺の死に様を見て目に焼き付けろ。
そしていつまでもそれをネタにオナってくれ。
誰よりもエロく散ってやるからな!
リング上に待つのは、薬物によって彼岸に渡ってしまったゾンビ。
不破晃司は股間に髑髏をあしらった黒いロングタイツで獲物を品定めする。
以前よりキレのあるバルキーな肉体はステロイド投与によるものか。
いい色に日焼けしたマッチョボディーは、さながらダーティー・ランボーだ。
カーンッ!!!
地下プロレスの命運を決するゴングが鳴った・・・・
つづく
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