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インディー裏街道④

「俺、プロレスで勃つんです。というかもうプロレスでしか興奮できない。」
桜井勇治の悲痛とも言える告白を反芻しながら、藤堂猛は深夜の建築現場のゲートをくぐった。
今夜は荷受けバイトの夜勤だ。
(人には知られたくない内なる本性・・・・)
藤堂自身は思春期の頃から、男同士の闘いに昂る自分に気付いていた。
特に、勝ち目のない闘いに挑みそして破れ去る男や、痛めつけられながも闘志の炎を燃やし続ける男の心がぽきっと音を立てて折れる瞬間などに、異常な興奮を覚えた。
衣服の上から伺える男性器の存在、つまりモッコリを見ると鼓動が速くなり、平静ではいられなくなった。
TVでプロレスを初めて見たのはいつだっただろう。
そこで繰り広げられる衝撃的な光景はたちまち藤堂の情緒を狂わせるため、誰かと一緒にプロレス番組を見ることは不可能だったほどだ。
大勢の人達の前で、陰部の存在を隠すことなく闘う半裸の男たち。
藤堂にとって、それはもはや自分の人間としての本能に直結する世界だった。
だが、その素晴らしい世界が他の人間には違って見えていることにも、藤堂は早くから気付いていた。
このことは隠しておかなければ・・・
中学の時の相撲部、高校ではレスリング部、藤堂は格闘技の習熟に熱中することで、内なる炎を周りに悟られずにやり過ごすことができた。
だから、桜井の葛藤は手に取るように解るのだ。
(アナザー・ワールドの本能のスイッチが入ったか・・・・あいつにとってはタイミングが悪かった。)
藤堂のように初めからこの道しかないと覚悟を決めていれば、地下プロレスで生きていくことは充分可能だった。
だが今、桜井にはメジャー団体から正式に入団のオファーが来ているというのだ。
「プロレス界でスーパースターになる、それが俺の夢でした。」
表の世界での成功、裏の世界での悦び。
桜井の心はまさに引き裂かれそうになっているのだろう。
(一線を越えた男は必ず苦悩を抱えることになる。この社会では。)
どんな男でも、闘いの魅力には少なからず囚われている。
実際に闘いの道を歩むと決めた男はなおさらだ。
裸で、互いの肉体をぶつけ合いこすり合わせる内に、桜井のように眠っていた遺伝子が発動してしまうことがある。
それを藤堂は「一線を越える」と呼んでいた。
一旦欲望に気付いてしまったらもう後戻りはできない。
(さて、どうするかな・・・・)
思案しながら歩くうちに、待機所の入り口に着いた。
深夜の建築現場には警備員の他人影もない。
ドアを開けると木下啓吾が畳の上に寝そべってスマホをいじっていた。
藤堂に気付くと、起き上がって笑顔を見せた。
「お疲れっす!いや~藤堂さん来てくれてよかったっすよ。オヤジさんと二人じゃ大変だもの。」
「この間は悪かったな。」
猛者同盟の試合に出るために現場を離れたことを詫びた。
「いえ、あの時は大した資材は来なかったんすよ。それよりオヤジさんから聞きましたよ。藤堂さんプロレスラーなんですって?俺、プロレス好きなんすよ~!」
目をキラキラさせながら藤堂を見つめる啓吾に、思わず苦笑する。
(お前が思ってるようなプロレスじゃないけどな・・・・)
「この間は猛者同盟に出たんですって?一度見たいと思ってたんすよ猛者同盟。すごいっすよ藤堂さん!」
「あ、ああ。オヤジはどこいったんだ?」
何となく話をそらしたかった藤堂だが、啓吾の興味津々な追及は止まらなかった。
「夜食の買い出しっす。藤堂さん誰とやったんすか?俺も知ってるレスラーかな。ときどきネットにアップされてるんすよ、猛者同盟。俺、結構見てるんだけどな~。」
「きっとお前は知らない奴だよ。メインじゃないからな。」
「ねえねえ、藤堂さんどんなコスで試合出てるんすか?」
作業着に着替えようとチノパンを脱いでいた藤堂の動きが止まった。
黒いケツ割れの尻が裸電球に照らされる。
「さ、さすがプロレスラー、いいケツっすね。」
藤堂の眼に怪しい光が宿り始めていた。
「見たいか?俺の試合着。」
「え・・・、ええ。あるんすか?今・・・」
藤堂の雰囲気が変わったことに少し戸惑いを覚えながらも、啓吾は答えた。
藤堂は無言でリュックから赤いショートタイツを取り出した。
今日、パセリさんから渡されたタイツだ。
「これだよ。」
昼間、藤堂が直穿きして雄臭がほのかに香るタイツを啓吾に手渡した。
「え・・・ええ・・・!こんな際どいやつ・・・・マジすげー・・・・うっすいなー、透けそう・・・・」
心なしか怖々している啓吾に、藤堂が怪しい笑みを湛えながら言う。
「履いてみるか?」



K王線、F中駅を降り立った桜井雄二は、ゴツイ身体を南に向けて歩いていた。
(藤堂さんに話せてちょっとスッキリしたかな・・・・)
心は葛藤していても、実は進むべき道はもう決まっているのだ、と桜井は解っていた。
メジャー団体で再デビューする。
このチャンスを棒に振ることなど考えられなかった。
大きな鳥居をくぐり夜の神社の境内を歩く。
そもそも自分は男になど興味は無かったはずなのだ。
猛者同盟でプロレスを始めたばかりの頃、まだプロレスでは食っていけなかった。
割のいいバイトは無いかな、と探していた時に見つけたスポーツ紙の広告。
〝逞しい男性求む レスラー優遇 高額報酬〟
これに応募したことが全ての始まりだった。
男色家の出した広告だとは解っていた。だが金が欲しかった。
いや・・・そうじゃない・・・
あの時、すでに俺は何かの期待を抱いてあの雑居ビルの地下に向かったのではなかったか・・・?
結局、異様に強いオヤジにプロレスで負かされた揚句、犯されまくったのだった。
桜井雄二は男の味を知った。
皮肉なことに、それ以来桜井のレスラーとしての人気が急上昇したのだった。
「ふふふ・・・ストレートを気取っていてもレスラーというのは潜在的に男を求めているものじゃ。おぬしも心の壁を取り払うがよい。プロレスラーとして成長したければなおさらじゃ。」
あの時の怪老人の言葉が脳裏に焼き付いている。
(確かに俺はレスラーとして一皮むけた。あの日がきっかけで・・・・。しかし・・・・)
競馬場方面に向かう坂道を下っていくと、看板の灯を落とした一軒の店があった。
居酒屋 「メンズ・バトル」
鍵の掛かっていない引き戸を開け、奥に声をかける。
「こんばんはー。ブッちゃんいる?」
奥の厨房から太った男が以外に機敏な動作で姿を現した。
「おーサクか。今夜は誰も稽古にきてないよ。」
「そう。別にいいんだ。一人で練習したい気分なんだ。」
「ほーい。ボクは明日の仕込みやってるから。ごゆっくり~。」
テーブルが並ぶ店内を奥に進む。
床が2、3段下がった広いスペースがあり、なんとそこにリングがあった。
ここは猛者同盟のホーム・グラウンド。
何カ月かに一度のペースで広い会場を借りて興行するが、普段はここで金曜と土曜の夜に試合を見せるのが、猛者同盟の主要な活動だ。
もともとプロレス狂いのマスター「ブッちゃん」が地元の力自慢を集めて始めたのが猛者同盟だ。
阿木銀次郎も居酒屋に酒を卸していた繋がりで、プロレスを始めたのだった。
今ではコアなファンがつき、金土の夜はかなりの賑わいを見せる。
火曜の今夜は店は定休日だ。
暗いリングで明かりもつけず、桜井は裸になった。
いつもはトレーニングの時はTシャツ、短パンだったが、今日はショート・タイツを履いた。
試合の時はしっかりしたサポーターを着ける。勃起を悟られないためだ。
昼間、パセリさんの工房でもらったタイツを直穿きする。
「これ桜井ちゃんにサイズ合うんじゃないかな。試供品ってことでどうぞ。こんどバッチリ採寸してジャスト・フィットなの作らしてよ。」
いつものタイツよりサイドが細い。生地もかなり薄い。だがこの収縮性と皮膚に張り付く感じが絶妙の心地よさを生む。
(噂どおり〝魔性のタイツ〟だな・・・・)
パセリさんが渡してくれたのは真っ青なタイツだった。
桜井は普段の試合でも青いタイツを履く。
だがこの青は、なんというか一段上の青とでも言おうか、淫靡な光沢を放つ青だった。
見る間に桜井の男根が硬くなっていく。
「ああ・・・・」
思わず腰の力が抜け、その場で股間をさすりたくなる。
桜井は意志の力でその欲望を抑え、リングに上り、黙々と受け身をとり続けた。



「履いてみろよ。プロレス好きなんだろ?」
藤堂の様子が有無を言わさぬ感じになってきて、啓吾は少し怖くなってきた。
「オ、オス。じゃあちょっと履かせてもらいます・・・・」
タイツを持って仕切りの向こうに行こうとする啓吾を藤堂が止める。
「ここで着換えろよ。恥ずかしがらなくてもいいだろ。風呂も一緒に行ったのに。」
「え、えと・・・そ、そうすか?なんか恥ずかしいけど・・・」
おずおずと作業ズボンを脱ぐ啓吾。
照れながらボクサーパンツも脱ぐと、
「じゃ、じゃあ履きます・・・ね・・・」
向こうを向いた啓吾の尻がささっと赤いタイツで隠れる。
「上も脱げ。」
藤堂の強い口調にビクッとした啓吾は反射的に着ていた長Tを脱いだ。
藤堂には遠く及ばないものの、啓吾の身体も肉体労働で鍛えられている。
若くきれいな筋肉が赤いタイツで卑猥なオーラを放ち始めた。
パセリさんのタイツは非常に収縮性に優れているため、履いていない状態ではとても小さく見える。
藤堂の下半身のサイズでジャストな伸びになるのだが、一回りサイズが小さい啓吾が履いてもそれなりにフィットしていた。
「うわ~・・・思いっきりモッコリじゃん。これヤバイっすよ。恥ず~。」
顔を真っ赤にしつつ、変なテンションの啓吾に、いきなり藤堂が襲いかかった。
「何が恥ずかしいんだ?俺達プロレスラーはこれで人前で試合やってんだ!」
ケツ割れ姿の藤堂のコブラツイストがあっという間に完成する。
「ぎゃー!!!!!!!い、痛いっす!!!!!がー!!!!!」
絶叫する啓吾を人形のように扱う藤堂は、今度はアルゼンチン・バックブリーカーだ。
「うぎっ!!!い、息ができない・・・や、やめて・・・ゆるして・・・・」
「プロレス好きなんだろ?こんなんで音をあげるな!」
アルゼンチンをかけながら啓吾の睾丸を握る藤堂。
「ぎえーっ!!!!!だ、だめ・・・がっ・・・・いてっ!・・・・・ぎゃーっ!!!!」
もはや涙声の啓吾。
藤堂は金玉を握る手を離して竿に手をあてた。
男を知り尽くした藤堂の絶妙な指技が、タイツ越しに啓吾の「男」を刺激する。
「あ・・・な・・・なにを・・・・あが・・・」
アルゼンチンに苦しみながら啓吾の男根が硬くなっていく。
藤堂はぐったりした啓吾を肩から下ろすと、フルネルソンに決めたまま、詰所の入り口に近づいた。
そこには、作業時の服装チェックのための全身が映せる鏡があった。
「おら!啓吾、見ろ!自分の無様な姿を!プロレスラーはいつもこんな姿を人に見せて稼いでんだよ!」
啓吾のうつろな目が涙をぽろぽろ流しながら鏡を見つめる。
「モッコリが恥ずかしいだ?お前勃ってるじゃねえか!お?これは何だ!?」
藤堂はフルネルソンを片方解くと、啓吾の股間をタイツ越しにしごき始めた。
「あ・・・ああ・・・うおお・・・」
啓吾の泣き声とも喘ぎ声ともつかない声が漏れる。
(こいつイッちまうな・・・・)
藤堂はここでようやく我に返った。
木下啓吾はまだ20歳そこそこの若造だが、嫁さんも、生まれたばかりの赤ん坊もいる。
いつもケータイで娘の画像を見せびらかしている。
(こいつに一線を越えさせちゃだめだよな・・・・・)
藤堂は力を抜くと啓吾を畳の部屋に連れ戻した。
「な~んて!マジ・モードのプロレスごっこでした!」
突然不自然なキャラ・チェンジをする藤堂に、啓吾はイラっとしながらも心底安堵し、号泣した。
「ひ、ひどいっすよ!ヒクッ、マジヤバイっすよ。ヒクッ、もう!※○×※☆・・・・・」
泣き続ける啓吾を着換えさせ、藤堂はひたすらお茶らけ続けた。
夜食調達から戻ってきた手塚重雄は、訳のわからない空気にあてられ、持病のリウマチが痛み出す始末だ。
(ノンケすら勃起するプロレス・・・・そこで俺たちは生きているんだものな。桜井・・・・・)
藤堂は再び桜井の苦悩に思いを馳せていた。



「サク、ボク先に帰るよ~。鍵だけよろしく~。」
何やらいつもと違う雰囲気の桜井に声だけかけてブッちゃんは店を出て行った。
もう何十回、いや何百回受け身をとっただろう。
桜井は汗だくでリングを転げまわっていた。
パセリさんのタイツが汗で一段と淫靡に股間を浮き立たせる。
桜井は受け身をやめると、ロープに近付いて行った。
先週の新木場興行での藤堂と阿木の試合が脳裏に浮かぶ。
ロープに首を挟まれ苦しむ藤堂。
その神々しいまでにエロい姿・・・・・
桜井はトップロープとセカンドロープを交差させ、自分の首を挟んでみた。
硬いワイヤーロープが首を締め付け息苦しくなる。
サードロープに跨ぐ形で尻を乗せる。
「おあっ・・・」
ロープの硬さがケツの穴に伝わり思わず声が出る。
桜井は両足をエプロンサイドからリング下に投げだした。
たちまち首に体重がかかり顔面が充血する。
同時に股間にロープが食い込み、睾丸とケツの割れ目をワイヤーが猛烈に刺激する。
「おあ・・・おお・・・あが・・・・・」
桜井は自重でロープを激しく揺さぶり、「ひとり絞首刑」の快感に悶え狂った。
(ああ・・・俺の鍛え上げた体が・・・・筋肉が・・・・ああ・・・・痛めつけられている・・・・・おお・・・・・)
硬いワイヤーが上下するたびに金玉がグリグリと圧迫され激烈な痛みが股間を襲う。
ケツに食い込んだ時には、前立腺が刺激されるのかチンポの先から我慢汁が溢れ、青いタイツに卑猥な染みを広げていく。
(あお・・・・桜井、ロープ攻撃に苦しんでいます・・・うぐ・・・・これは危ないぞ・・・・・桜井、イってしまうのか・・・・・・あぐ・・・・桜井とうとうリングに沈むのか・・・・・ああ・・・おお・・うおおおおお・・・・・・)
「うがぅおおおおお!!!!!!」
ひとり絞首刑、ひとり実況で桜井は昇天し、ひとり敗北、ひとり失神でしばらくロープにぶら下がっていた。
白濁液が青いタイツの股間を伝い滴り落ちる。
(俺は本当にこのままメジャーに行っていいのだろうか・・・・・?)
意識を取り戻した桜井は、答えが出ていたはずの問題に、悶々と自問自答を繰り返すのだった。
どこまでも「ひとり」な桜井の夜だった。


つづく








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Comment

タイツの質感が感じられてとても良かったです!
並々ならぬこだわりが伝わってきました。
職人芸のタイツ、もっと見てみたいです。
これからの2人の展開が楽しみです。

若い頃から自分にとってもプロレスはエロビデオと同じで、一人で観て最後は必ず抜いてました。人と観るのは恥ずかしかった。
今回の話も抜きどころ満載でとても興奮しました。特に桜井が一人プロレスで首、金玉、ケツの三点急所責めでイってしまうところは圧巻でした。今後の桜井が楽しみです。
自分も腹や金玉殴って抜くので、今回の話はかなり興奮しました。
ありがとう。これからも頑張ってください。

ブルーカレーパンさんへ

ショート・タイツが好きすぎてヤバイ感じの管理人です(笑)
楽しんでいただきありがとうございます。
二人の行く末は自分でも楽しみです。
おそらくひどい目にあうのでしょうが・・・・
乞うご期待っす!

Benさんへ

オナニーするプロレスラーってエロいかな、と思って書きました。
腹や金玉を殴って抜くなんて、まさに桜井と一緒ですね!
見たいかも、なんて思っちゃいました。
プロレス雑誌を、まるでエロ本買うような後ろめたさでレジに出していた頃が思い出されます。
同じような思春期を共有する仲間として、これからもヨロシクです。

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