東京都赤羽。駅北口を降りてウネウと毛細血管のように伸びる坂道を登る。
高度成長期の象徴だった古い団地群が取り壊され、こぎれいなデザイン公団へと次々と建て替わっていくため、3か月も来ないとすっかり風景が変わっていたりする。
藤堂猛は先ほどから目的地にたどり着けずに巨体のTシャツに大汗をにじませていた。
今日は暑い・・・・・
東京特有の粘つく残暑が猛威をふるっていた。
「おっ、ここは見たことのある道だ・・・・。」
時代を感じさせる大きな貯水塔には確かに見覚えがある。
「と、いうことは・・・・」
しばらく歩くといまだ古いままの団地が立ち並ぶ一角にたどり着いた。
三方に棟が張り出した独特の形状の建物があった。
かつては時代の最先端を行く建築物だったのであろうが、今では心霊スポットにでもなりそうな佇まいだ。
24号棟の5階、そこにパセリさんの工房があった。
「おう、久しぶり~。出来てるよ。」
藤堂が入っていくと、パセリさんがこれまた古いミシン台から顔をあげた。
パセリさんは「タイツ職人」だ。
プロレスのショート・タイツのみを作り続けている。
「昔はFナキやKキハラなんかもここでタイツ作ったけどな・・・最近は俺のエロ・タイツは人気がなくて・・・・」
いつだったか焼き鳥屋で飲んだ時にパセリさんは寂しそうに言っていた。
藤堂はパセリさんのタイツ一筋でやってきた。
彼の作るタイツの質感、形状は他では得られない。
レスラーひとり一人の男根のサイズに合わせて微妙に変える裁断により、最高にエロいモッコリを演出する。
藤堂のために作られたタイツは藤堂が履いて初めて真価を発揮する。
まさにテーラード・タイツなのだ。
「これこれ。この赤、いいだろう。藤堂ちゃんご要望の〝たぎる赤〟だろ?」
パセリさんが真っ赤なショート・タイツを引き出しから取り出した。
「うーん!いいねー。」
黒やネイビーなどの暗色系のタイツを好んでいた藤堂だったが、なぜか急に派手なタイツが欲しくなり、パセリさんに発注していたのだった。
「早速、履いてみるかい?」
「ぜひ!」
藤堂はその場で下半身丸出しの格好になった。
新しいタイツに足を通す時は、いつも格別の胸の高鳴りがあった。
収縮性のある薄い生地が、藤堂の逞しい下肢の筋肉によって引き伸ばされる。
それは臀部の丸みに張り付くと、吸いつくように尻の割れ目に生々しく食い込んだ。
すでに半勃起状態の藤堂の男根は、赤い生地に心地よく押しつけられ、外側の表面に非常に扇情的なふくらみを形作った。
部屋の壁一面に張られた鏡に映る自分の姿に、藤堂はめまいを覚えた。
汗で張り付き乳首が透ける白いTシャツ。その下は真っ赤なビキニがかろうじて陰部を覆うのみである。
(エロい・・・・・)
自分に酔いしれるあまり鏡に吸い込まれそうな感覚に陥っていると
「よしよし!ばっちりだぞ!さすが俺!」
パセリさんの声で我に帰ることができた。
「このモッコリ、芸術作品だろ?」
パセリさんが股間を揉んできた。
「おあ・・・・」
思わず感じてしまい声を漏らす藤堂。
「折角だからここでこのタイツの筆下ろししちゃう?」
尻の割れ目に指が入ってきた。
「うお・・・ああ・・・・・」
〝タイツ職人〟ならではの絶妙なタイツいじりに藤堂の興奮が高まる。
「ぬ、抜いてくれ・・・・・」
「いいよ~。精子が染みてやっと俺の作品は完成だからな・・・・・」
パセリさんがTシャツの上から乳首に触れてきたその時・・・・・
「こんにちは。」
玄関から声がする。
その声の主は、
桜井勇治だった。
「すみません。お取り込み中でしたか?」
〝客間〟に通され二人きりになると桜井はタイツ姿の藤堂に言った。
「い、いや・・・別に・・・」
パセリさんはコーヒーをテーブルに置くと出て行ってしまった。微妙に不機嫌だった。
「申し訳なかったかな。でもあの方が伝説のタイツ職人なんですね。俺も作ってもらいたいな。」
屈託なく話す桜井を、藤堂はコーヒーをすすりながら観察する。
「もしかして、俺をつけてきたってこと?」
桜井は一瞬間を空け、真顔で答えた。
「そうです。すみません。」
「何でまた・・・・?」
「実は・・・・。」
「どうした?何かあったのか?」
深刻な様子の桜井に、藤堂も真剣な表情になった。赤パン姿だったが。
「藤堂さんと阿木の試合のことで・・・・」
「えっ?!」
先週のあの試合のことか?射精がバレた?
「あの試合が何か問題でも?」
内心どぎまぎしながら藤堂は平静を装った。
桜井は藤堂をまっすぐ見つめた。
「ええ。それに2ラウンド目も。」
「なっ・・・!?」
藤堂は持っていたコーヒーカップを落としそうになった。
「み、見ていたのか・・・・?!」
あの日、ゲリラ豪雨の混乱にまぎれ退場した藤堂と銀次郎は、お互い興奮が収まりきらずに会場裏に転がりこんだのだった。
広い駐車場に設置された特設会場の裏手。
幕に仕切られたそのスペースはカラーコーンやら何やらが置かれた一角だった。
むき出しのアスファルトに息苦しいほどの激しい雨が打ち付けられている。
走りこんできた二人はアスファルトの上で絡み合う。
銀次郎が藤堂の髪を掴み、資材置き場に投げ飛ばす。
ガッシャーン!
派手な音を立てて交通資材が崩れ藤堂を下敷きにする。
「まだくたばるなよ。」
銀次郎は黄色いプラスチックのチェーンを藤堂の首に巻きつけ、力任せに引っ張った。
「うぐっ・・・・!」
アスファルトに引きずられた藤堂の背中に尻に血がにじむ。
銀次郎はカラーコーンを立てると、ぐったりする藤堂を持ち上げ、コーンの先端に腹から落とした。
「ゲボッ!」
藤堂の胃液が逆流する。
のたうちまわる藤堂。
だが股間はネイビーのタイツを突き破らんばかりに怒張している。
銀次郎は黄色と黒の縞模様のバーを藤堂の背中に横にしてあてがい、チェーンで両腕を固定した。
案山子のようになった藤堂に、怒涛のストンピング地獄が襲う。
全身の至るところを踏みつけられるたびに、藤堂の股間ににエクスタシーの電流が走った。
「お前は最高の変態マゾ野郎だな!」
銀次郎の声も興奮で上ずっている。
「めちゃくちゃにしてやる・・・・・」
銀次郎の眼に怪しい光が宿る。
地面に磔になった如くの藤堂の両足を、両腕で開脚させ持ち上げる銀次郎。
タイツはアスファルト上で引きずられたためところどころ破れている。
「ここを痛めつけられたいんだろ!」
銀次郎の急所ストンプが始まった。
「うぎゃっ!いぎ!ごわっ・・・・」
声にならない悲鳴を上げる藤堂。
金玉の猛烈な痛みに意識が飛びそうになりながら、天国にでもいるような極上の快感も襲いかかってくるのだった。
豪雨が銃弾のように全身に降り注ぐ。
鍛え上げた肉体がズタボロに破壊されていく感覚に、藤堂は酔いしれた。
「金玉ぶっ潰すぞこら!これで終わりだ。死ねっ!藤堂!!」
銀次郎渾身の一発が藤堂の睾丸にヒットした。
「ぎゅぅわっー!!!」
藤堂は白目をむいて失神した。
同時にタイツの股間からは白い雄汁がドクドクとあふれだした。
銀次郎はつなぎのファスナーを荒々しく下ろすと、失神している藤堂に馬乗りになり、鬼頭を藤堂の顔面に向けた。
「ぬぅおうっ!!!」
夥しい量のザーメンが、口を半開きにした藤堂の顔面にぶっかけられた。
滝のような雨が、高粘度の精子をたちまち洗い流した・・・・・
「あれを見ていたのか・・・・」
藤堂は改めてカップを持ち直すとコーヒーを静かに一口飲んだ。
「で、俺はクビか・・・」
桜井は相変わらずまっすぐ藤堂を見つめている。
「いいえ。そうではありません。俺は・・・」
藤堂も桜井の眼をしっかり見据えた。
「俺はあれを見て勃起しました。いえ、イッてしまったんです!」
今をときめく人気レスラーの告白の瞬間だった。
つづく
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男にとって絶対攻撃されたくない金玉を攻められて、恍惚となる藤堂は本物のマゾ野郎だ最高。桜井にも金玉ぶっ潰されるのか?今後の藤堂が楽しみです。