猛者同盟9月興業、第4試合は雨の幕開けとなった。
屋外特設リングは水浸しとなったが、中止にはならない。
客席、と言っても8割は立ち見だが、傘を開いてリングを見つめる観客からも文句は出ない。
むしろインディーならではのハプニングを楽しんでいるかのようだ。
会場には、リング上のレスラーたちと観客が同じ雨粒に打たれているという、ある種の一体感が生まれていた。
フラッシュ藤堂のタイツが濡れそぼり、陰毛が透けていることが解るほどリングと客の距離は近い。
エプロン・サイドでロープに首を挟まれ、圧迫された気道のわずかな隙間から酸素を確保せんとする藤堂の肺が呻くヒューヒューという音もはっきり聞こえる。
阿木は藤堂の髪を掴み、苦悶にゆがむ顔を観客に見せつけるようにした。
「いいぜ・・・お前最高だぜ・・・・このツラ・・・・たまんねぇぜ・・・・」
団体の看板ヒール阿木銀次郎は、都下で父親の跡継ぎとして酒店を営んでいる。
重い酒瓶の上げ下ろしで鍛えられた体躯は、地元ではマッチョ酒屋の兄ちゃんとして親しまれている。
健康な体と堅実な仕事ぶりで、今が男盛りの銀次郎が独り身なのは、趣味がプロレスであるせいかもしれない。
もともと嗜虐性があることは自覚していた。
何人か付き合ったオンナは銀次郎の本性を知るとことごとく逃げて行った。
半ば自暴自棄になり、持て余した体力を発散しようと好きだったプロレスを始めたのだが、ここで銀次郎は開眼した。
(男を痛めつけるほうが面白い。)
ある意味、約束事の範囲内であればいくらでも男を痛めつけることのできるプロレスという世界は、銀次郎にとって公開SMプレイの場だった。
しかも報酬つきで。
銀次郎の残虐かつどこか扇情的なヒールぶりは、猛者同盟のファンに強烈にアピールした。
グレーのつなぎは試合コスであると同時に普段の仕事着であり、男を痛めつけるための戦闘服でもあった。
雨に濡れたつなぎが身体に張り付き身動きが取りづらい。
銀次郎は不快をすべて藤堂にぶつけるように、残酷プレイを続けていた。
客席からパイプ椅子を持ち出すと、リングに戻り、ロープに首を挟まれたままでぐったりしている藤堂の身体を滅多打ちにし始めた。
「ごぅわっ!・・・おあっ!・・・・」
パイプ椅子を打ちつけられるたびに藤堂から悲鳴のような呻き声が漏れる。
筋肉が盛り上がる全身がのたうち、濡れたタイツがケツに食い込んでいく。
ひとしきり椅子打ち地獄が続き、藤堂の動きが止まった。
銀次郎は藤堂をロープからはずすと立ち上がらせ、股に頭を挟みパイルドライバーの姿勢を取った。
ゆっくりと首を掻き切るポーズで客にアピールする。
「おりゃっ!」
掛け声とともに藤堂の身体が真っ逆さまに抱えあげられる。
「おお~!」
観客席からどよめきが漏れる。
逆さになった藤堂の股間は見事に盛り上がっていた。
雨に濡れているためにその勃起は、男根の形をくっきりと浮き上がらせている。
パイル・ドライバーは受ける側の協力なしには成立しない技である。
抱えあげられる者の意思が無ければ、きれいな倒立姿勢にはならない。
藤堂は自らの意思で、モッコリパンツを客に見せつけているのだ。
「マジボッキじゃん・・・・」「すげー・・・・」「うわ~イヤラシイ」「デカいな・・・・」
ほぼ裸の大男が痛めつけられながら生殖器を肥大させている状況に、観客達は息をのんでいた。
否応なく「男」を見せつけられていた。
銀次郎は、勃起タイツを観客にゆっくり鑑賞させるように長い滞空時間を取ると、
「死ね!藤堂!」
と叫び、巨体を跳躍させた。
ドゴーンッ!!!!
ジャンピング・パイル・ドライバーがマットに突き刺さる。
大の字にダウンする藤堂は、時々痙攣するかのようにピクッと身体を震わせる他は動かない。
眼と口が半開きとなった表情は、敗北を悟った雄のそれだった。
銀次郎がフォールの体勢を取った。
「ワン!ツー!スリ・・・・」
「おっと、もう少し楽しませてくれ。お客さんも結構喜んでるみたいだしな。」
銀次郎は髪を掴んで藤堂の肩を上げた。
(お?思ったよりデキる奴かもな・・・)
藤堂は心のうちで思った。
今までの藤堂のやられは全て演技だった。
もちろん技の一つ一つは一般の人間が食らったら大怪我必至の危険なものだ。
だが、プロレスラーはそんな技に耐えるために厳しい鍛練を積んでいる。
今日の藤堂の仕事は、ヒールの餌食になるまさしくジョバーの役割だった。
技を受ける側のリアクションで、その技の生き死にが決まる。
プロレスの基本中の基本だが、これが上手くないとプロレスラーとしての本当の魅力が出ない。
地下では、いかにエロいやられを表現できるかが人気を左右する。
今日のような試合設定は、地下で修業を積んだ藤堂にとってまさにお手の物だったのだ。
とは言え、ヒールがショボくてはジョバーの腕が光らない。
酒屋の銀次郎にはそれほど期待していなかったのだが・・・
(意外とやるな・・・・)
雨の効果もあり、藤堂のやられマインドは活性化していた。
いつもは地上の客に勃起を悟られることを恐れていたが、今日はどこか吹っ切れていた。
銀次郎のSッ気たっぷりの責めに心地よく身をまかせることができた。
試合前には負の印象を抱いていた銀次郎に、好感すら持ち始めていた。
「これで終わりだ!」
銀次郎がフィニッシュとして選んだ技は、
リバース・レッグ・シザースだった。
相手の顔面を自分の股間に押しつけるかたちで挟み込む。
銀次郎の逞しい太ももが、ガッチリと藤堂の頭を締め付けた。
「んぐ・・・・っ」
口も鼻孔も濡れたつなぎに抑えつけられ全く息ができない。
窒息の恐怖を感じながら、藤堂はもだえる自分の身体が観客にどう映るかを計算していた。
濡れたタイツはすっかりケツの割れ目に食い込み、競パン日焼けの残る尻が丸見えになっている。
足を動かすたびに、うつ伏せの尻が穴が見えそうなほど広げられ、睾丸の丸いふくらみが蠢く。
ケツをのたうちまわらせながら、両腕は断末魔のマッチョ・レスラーの苦しみを表現する。
(ぐ・・・マジで苦しいかも・・・・い、息ができない・・・・)
雨が激しくなった。
競パン生地のタイツは、濡れて一層皮膚の一部になったかと思えるほど薄く感じられる。
マットに擦りつけられる男根が熱い。
(あ・・・イってしまいそうだ・・・・)
「おお・・・・お前のやられっぷり最高だ・・・・すげーぜ・・・すげー・・・・・」
銀次郎のイチモツも激しくいきり立っていた。
濡れたつなぎ越しにそれを感じた藤堂は、薄れゆく意識の中で
「太い・・・こんな太いものをぶちこまれたら・・・・」
などと思っていた。
「駄目だ・・・・イっちまう・・・・・」
(俺もだ・・・・・ううっ・・・!!!)
「おおうっ!」
二人はほぼ同時に昇天した。
射精の瞬間激しく収縮した藤堂の括約筋や、銀次郎のイク声も、ゲリラ雷雨の轟音にかき消された。
非常識な雨量に大混乱に陥った会場のドサクサに、二人は退場した。
藤堂と銀次郎の射精に気付く者はいなかったはずだった。
ただ一人、猛者同盟のエース、桜井勇治を除いては・・・・・
つづく
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田代さんは前作にも出てましたが、
前作との関係性も楽しみです。