「只今より、本日のセミ・ファイナル、30分一本勝負、ドクター・ストレンジ対シャーク朝倉を開始いたします。」
地下プロレスにもリング・アナはちゃんといるらしい。
客の男たちは血走った目で歓声をあげている。
緒方は客に背を向けてリング・サイドに立っていたが、ケツに大勢の視線を感じるようでどうにも落ち着けない。
Tシャツをかぶっただけで
ショートタイツ1枚の下半身は剥き出しだ。
「ケツが疼くか?はははは」
長谷部に笑われギクッとする。
(この人は俺の心が読めるのか・・・?)
戸惑う緒方の横をガタイのいい男が通っていった。
隆々たる上半身の筋肉、真っ白の
ショートタイツに収まりきらない豊満な臀部。
男は、通り過ぎる際に腕が触れた緒方と、一瞬視線を合わせた。
(・・・・・)
その吸い込まれそうな澄んだ瞳に、緒方の心臓がドキンと反応した。
男はリングに上がっていった。
「朝倉だ。今日、お前がセコンドを務めるレスラーだよ。」
「そ、そうか、歳は俺と同じくらいだな。」
動揺を長谷部に見抜かれないよう平静を装ったつもりが、声が上ずってしまう。
そんな緒方をジッと見つめると、長谷部はリングに目を移しニヤニヤしている。
「この間30になったかな。お前の一つ下だな。」
(体格も俺と同じぐらいだな。)
リング上で待機する朝倉を、ついジロジロ観察してしまう。
白い
ショートタイツは緒方と同じように競パンのようなタイトなものだった。
おそらく生地も相当薄いのだろう。股間の膨らみが眩しいほどだ。陰毛が透けて見える気がする。
そしてその精悍なマスクに心を奪わずにはいられない緒方だった。
ショートスタイルにカットされた毛髪はサラサラと、爽やかを絵に描いたようだ。
男らしいルックスの中に少年のようなあどけなさが残る、柴犬のような顔とでも言おうか、
(可愛い・・・)
見れば見るほど緒方の胸のときめきは増していった。
はっと気付くとゴングが鳴っていた。
朝倉の対戦相手、ドクター・ストレンジは日本人のようだった。
朝倉より一回りデカい。だがそれほど引き締まってはおらず、所謂昔のレスラー体型といった感じだ。
オーソドックスな技の攻防が続く。
サミングなどのヒール的な小技を多用しつつパワーで押すストレンジと、
空中殺法で相手を翻弄するスタイルの朝倉が、攻守をめまぐるしく入れ替えている。
緒方は、躍動する朝倉の筋肉に見とれると同時に、迫力ある試合展開にもいつしか引き込まれていた。
「意外とまともなプロレスをするんだな。」
「当たり前だ。エロレスだけじゃこんなに客は入らんよ。『プロ』の試合を見せなきゃな。」
ただ、表のプロレスとは明らかに違うこと、それはレスラーが双方みごとに
勃起していることだった。
「ここでは雄であることを隠さなくていい。むしろ見せつけるのさ。」
確かにリング上で闘う男達は、雄力をかけて闘うことに悦びを感じているように見えた。
ストレンジの攻撃の時間が長くなっていた。俯せに倒れた朝倉に覆いかぶさっていく。
「おっドクターの注射がはじまるな。」
よく見るとストレンジは朝倉の尻に自らの股間を擦りつけている。
観客の歓声がひと際高まった。
「やっちまえーっ」「朝倉ーっ食われるなよーっ」
どうやらストレンジは朝倉のケツを犯そうとしているらしい。
「ドクターも結構やり手のタチ・レスラーだからな。今日も朝倉をヤるんだってはりきってたぞ。」
ストレンジがタイツの脇から
勃起した男根を取り出した。
(こんな野郎に朝倉が犯られる・・・!?)
心が泡立つような感覚とともに、自分がセコンドだったことを思い出し、緒方はリングにゲキを飛ばした。
「朝倉ーっ逃げろ!」
苦悶の表情を浮かべていた朝倉が、一瞬緒方の方を向きウインクした。
(えっ・・・)
またしても甘い衝撃に呆然とする緒方。
リング上ではストレンジがゴツイ男根を朝倉に挿入しようとしている。
(ああ、このままでは朝倉が・・・!)
思わずリングに飛び上がろうとする緒方の肩を、長谷部が強い力で制した。
「まあよく見ろよ。」
ストレンジが挿入に手こずっている。
どうやら朝倉のアナルが固く閉ざされているようだった。
そうこうしている内に朝倉が自分のケツを突き上げた。
そして二つに盛り上がった大殿筋でストレンジのイチモツをガッチリと挟んだではないか!?
なんということでしょう!
朝倉がストレンジのモノを挟んだまま腰を激しく動かすと、
「おおおおおおお!!!!!」
野太い雄叫びとともに、ストレンジはあっけなく果てた。
タイツのケツにストレンジのザーメンを滴らせながら朝倉は立ち上がった。
「おっさん、満足したか?」
膝立ちで恍惚の表情を浮かべているストレンジの後頭部に、朝倉の回し蹴りが叩き込まれる。
受身もままならず顔面からマットに叩きつけられるストレンジ。鼻血が吹き出した。
朝倉は休む暇を与えず、伸びている中年レスラーの髪を掴むと上体を引き起こし、
低空ドロップキックを顔面に炸裂させた。
血しぶきを上げながらストレンジがダウンする。顔面は血まみれだ。
サラサラヘアを少し汗で湿らせた爽やかイケメン青年が中年を甚振り倒すシーンが、ひとしきり続いた。
観客は憑かれたように言葉にならない声を上げている。
緒方も、朝倉のアナザーサイドを目の当たりにして衝撃を受けていた。
だがそれは依然として甘美な衝撃だった。
血の海となったリングに這いつくばるドクター・ストレンジがピクリとも動かなくなった時、
ようやく相手コーナーからタオルが投げ込まれた。
「THPWのリングではよっぽどのことがない限りレフェリーストップは無い。
死んだら後々面倒だからその前には止めるけどな。」
長谷部がのんきに説明する。
勝ち名乗りをあげる朝倉に歓声が降り注ぐ。
「いいぞーっイケメン!」「処女を守ったなーっ」やんややんや
リングを降りてきた朝倉が緒方の正面に立つ。
「緒方さんですね。はじめまして。」
「あ、ああ、はじめまして。お、緒方です。」
試合後の蒸気した顔で見つめられて、緒方の胸の高まりはマックスとなった。
「まあまあ、とりあえず引き上げようや。」
長谷部の促しで3人は花道を戻っていった。
観客が今にも襲いかかってきそうな勢いで3人を取り巻く。
花道に設けられた頑丈な鉄製のアーチ型の柵のおかげで直接触れられることはない。
(すげえな。)
異様な興奮の坩堝となった会場を見渡していた緒方の足が、ピタッと止まった。
ある一点を見つめて固まっている。
客席の中に設えられたVIP席、そこに悠々と陣取るがっしりとした体躯の初老の男。
(あいつは・・・・何故ここに!?)
「まあまあ、まあまあ。」
長谷部が訳知り顔で、緒方の肩を押した。
再び歩き出した緒方の頭はぐるぐる回っていた。
(あれは・・俺を亡き者にしようとしていた・・・黒杭組長・・!!)
つづく