鮫島の武骨でありながら、まるで節足動物の足のように怪しく動く指が、藤堂の大胸筋の上を這いまわる。
官能的なアールを描く丘の頂上にちょこんと突起する乳首は感電装置だ。
指が先端をそっとかすめただけで藤堂の全身に電流が走る。
「ああっ・・・・・んぐっ・・・・・・おあ・・・・・・・・・・・」
片腕で首をホールドされた藤堂の顔面は、苦痛と快感に歪み、涎まで垂らしている。
後頭部に密着した鮫島の吐息がさらに忘我の世界へと藤堂を追い詰める。
「オッサン・・・・あんたエロすぎだよ。俺は理性を狂わされるのを好まない性質なんだ。あんたは俺を落ち着かなくさせる唯一の男だ。残念な気もするが排除するぜ。」
鮫島はそう言うと、藤堂の乳首を突然もの凄い力で摘まんだ。
「うぎゃーーーっ!!!!!!!!!」
乳首の細胞を壊死させるがごとくの指万力に、マッチョ野郎は絶叫する。
赤いタイツの中でビクンと脈打った男根の先端から透明な液体が溢れだした。
(藤堂が・・・・・・壊される・・・・・・・)
カウパーが止まらない藤堂の無様な艶姿を目の前にして、カムイは鮫島の真意を悟った。
自分を拉致するような手の込んだことをしてまで藤堂をおびき出したのは、藤堂を排除するため・・・・潰すため・・・・。
鮫島の目的はただ藤堂を痛めつけて犯したいのだと最初は思っていたが、どうやらそれだけでは収まらないらしい。
若さゆえの歪な完璧主義が、己を惑わす藤堂の存在そのものを許さなかったのだ。
STFの快感地獄に藤堂は木偶のように痙攣し続ける。
遅かれ早かれ、藤堂はタイツの中に雄汁をぶちまけるのだろう。
そして自分より10歳近くも下の若造に陵辱しつくされ、文字通り性も根も付き果て廃人に成り果てるのだ。
(藤堂・・・・・目を覚ましてくれ・・・・・・)
カムイは唇を強く噛む。
藤堂がここに来た〝目的〟も今となっては解る。
自分を助けに来たわけではないのだ。
鮫島に痛めつけられ犯されるために来たのだ。
潰されるためにやって来たのだ・・・・・・・・・・・
(藤堂!それでいいのか?お前のゴールは本当にここなのか!?)
鮫島の目つきが変化していた。
獲物を弄ぶ悦びの色は影をひそめ、どこか切羽詰まった〝雄〟の光を宿している。
おもむろにSTFを解いた鮫島は立ち上がった。
パープル・タイツの股間には信じられない隆起が形作られ、先端には染みが浮かんでいる。
うつ伏せに倒れる藤堂のタイツを掴んで引っ張り上げる。
赤いタイツが最大限に引き伸ばされ、藤堂の白いケツにギリっと食い込んだ。
「うお・・・・・・」
ケツの刺激に喘ぎ声を洩らすマッチョ野郎の髪を掴み、無理やり立ち上がらせる。
「てやっ!!!」
棒立ちの藤堂の顎に足刀蹴りが叩きこまれる。
ガクッと膝から崩れ落ちる藤堂の頭頂部に、間髪いれず踵落としが振り下ろされた。
前のめりに倒れていく藤堂の髪を掴む鮫島。
藤堂は脳震盪を起こしたのか全身が脱力し、両腕はだらんと垂れさがっている。
そんな戦闘不能の木偶人形の顎に膝蹴りがアッパーに叩きこまれた。
膝を軸に弧を描いて後ろに倒れる藤堂。
もはや目は虚ろで何も映していない。
正座をしたまま寝転がったかのような姿勢でのびる藤堂。
鮫島はゆっくりと歩み寄ると藤堂のタイツのサイドに下から腕を差し入れた。
両方向からタイツが引っ張られ、藤堂の陰茎が透けるほど生地がのばされた。
鮫島は肘の関節までタイツに差し込まれた左右の腕を、藤堂の腰の辺りでクロスさせるとそのまま持ち上げた。
タイツによる拘束が加えられたベアハッグが完成した。
ケツはもはや褌状態で、白く鋭角な競パン日焼けが丸見えだ。
半失神の藤堂は腰が破壊される痛みにも満足に反応きない。
弓のように反り返った上半身には力が入らず、腕も頭部もゆさゆさと揺れるに任せている。
通常の試合なら間違いなくレフリーストップになるだろう。
だが、非情なセメントマッチにはそんな救済は望むべくもなかった。
「おらーーーーーーっ!!!!!!!!」
鮫島の咆哮とともに腰をホールドした腕に力がこめられ、神懸かりのようなパンプアップが前腕に、上腕二頭にもたらされた。
ブチッ!!!!!
布が裂けるような音がしたかと思うと、次の瞬間藤堂の赤いタイツが引きちぎれ、密着する2人の筋肉男の足元に落ちて行った。
(藤堂・・・・・!?)
カムイは目を疑った。
自分のヒーロー、フラッシュ藤堂が、タイツを破り取られた!?
プロレスラーの唯一の鎧、誇りの象徴であるタイツが!?
「藤堂ーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」
カムイは絶叫していた。知らぬ間に涙が頬を伝っている。
鮫島がベアハッグを解くと、藤堂はどさっとリングに崩れ落ちた。
シューズとニーサポーター以外何も身に着けていないマッチョ野郎が横たわる。
身体じゅうを破壊しつくされ立ち上がることもできない筋肉野郎は、男根だけを盛大にいきり勃たせていた。
その哀れな姿を見下ろす彫刻のような肉体。
鮫島は無言で自分のパープルタイツを脱いだ。
その股間にそびえ立つモノの大きさたるや!
ギーガーがデザインし、リドリー・スコットが映像に残したあの異星人のように、黒く粘液質に光る〝生物〟。
そう、それはそれ自体が邪悪で危険な生き物のようだった。
鮫島は脱いだタイツを、ダウンする藤堂の頭にすっぽりとかぶせた。
鮫島の股間の辺りが藤堂の鼻孔と口元にくるように。
鮮烈な雄の臭いに朦朧としていた藤堂の意識が呼び覚まされる。
タイツの足を入れる部分から覗く目に僅かな光が戻ってきた。
宿敵の、あろうことかパンツを頭から被せられる屈辱。
そしてその快感に抗うことのできない弱い自分。
藤堂は自分が死んだのかと思った。
この恍惚は、天国にいるとしか説明できないではないか!?
「オッサン、犯し倒すぜ・・・・・・」
鼻息が荒い鮫島は、柄にもなく冷静さを失っているように見えた。
目の前に横たわる三十男が発散するあまりに強烈なエロ。
自分が履いていたパンツを被って興奮している無様で妖艶なその肢体。
(こいつは・・・・・やはり俺を狂わせる。このまま放置できない・・・・・)
その時、
「うっ!」
ギーガーの先端から白い液体がほとばしった。
鮫島があまりの興奮にトコロテンで発射してしまったのだ。
濃い雄汁は藤堂の顔面に達した。
異星人の体液は強烈な酸性で全てを溶かし尽くすという。
顔面に降りかかったザーメンはまさに藤堂の魂を溶かしにかかった。
紫のタイツに落ちた雄汁は生地に浸透し、やがて藤堂の皮膚に生暖かい感触をもたらした。
もともとタイツに付着していた雄の臭いに一層鮮烈な要素を加えて藤堂の鼻腔に襲いかかる。
(鮫島のザーメンパンツを被って嗅いでいる淫乱な俺・・・・・)
「うおっ!!!!!!」
藤堂の身体が弓なりに痙攣し、ハンズフリーの射精がまたしても爆発した。
互いにトコロテンで果てた2人の筋肉野郎。
「くそ・・・・俺としたことが、一生の不覚だ。この野郎、生かしちゃおけねえ!」
鮫島がスカした仮面をかなぐり捨て藤堂に襲いかかろうとした。
(鮫島、俺を殺してれ。やり殺してくれ・・・・・・・・・)
藤堂の括約筋がひと際激しく収縮した時だった。
「ちょっと待ってくれ!」
鮫島の背後で声がした。
振り向くと、いつの間に現れたのかネイビーのショートタイツの素晴らしい肉体の青年が立っていた。
「なんだテメーは!!!!?」
気色ばむ鮫島をかざした掌で制す青年。
「俺は向井卓。あるところではポリスマン向井で通っている。今日は竜崎のオヤジさんの使いで出来た。」
「ジジィの!?」
「トードーさんをまだスクラップにはしないでくれってさ。」
「何を言っていやがる!好きにしていいって約束だ!」
「まあ落ち着け。この数時間で状況が大きく変わったんだ。君にも関係あることだ。もう一発出せたことだしここは納めてくれ。」
「な・・・・・・・!?」
先出しの失態を見られていたということか・・・・・・・・!?
「テメーっ!!!!!!」
憤怒に顔を真っ赤にした鮫島が全裸で向井に襲いかかろうとした。
すると向井はタイツから黒い手帳を取り出した。
「公務執行妨害になるよ。」
それは警察手帳だった。
謎の大富豪、竜崎が裏で国家機関と繋がっていることは鮫島も薄々勘付いていた。
この手帳は本物かもしれない。
だが・・・・こんな奴が警察官!?パンツ一丁のこいつが・・・・・・!?
「ど、どこが公務だよ!」
「いやいや立派な公務だよ。警察と地下プロレスとの関係について明るくないようだね、君は。」
ほら、と言って向井はくるっと振りかえってケツを突き出した。
形のよいブリケツには『POLICE』の文字が黄色くプリントされていた。
「これだって警察公式のショートタイツなんだぜ。作ったのはパセリさんだけど。」
「ぐっ・・・・・・・・・・・・!」
鮫島は拳を握りしめてぶるぶると体を震わせていたが、やがてリングに唾を吐き捨てると去っていった。
「代々木でオヤジさんが待ってるよ。」
怒りの後ろ姿に声をかけると、向井はまずカムイの手錠を解いた。
そして藤堂をリングから下ろすと両腕で抱いた。
「オヒメサマ抱っこするには相当な重量オーバーだな。」
カムイが近付いてきて藤堂の頬を思いっきりはたいた。
パシッという乾いた残響音の中、カムイは無言で立ち去った。
「あーあー、超怒ってるね。無理もないか。あんた楽しみ過ぎだよ。」
急展開についていけない藤堂は再び混沌の世界に落ちて行った。
向井はそんな藤堂の顔を見下ろしながらスタジアムの外に向かって歩いて行った。
「今は眠るといい。目が覚めたら違った世界に巻き込まれることになるからな。」
パンツ一丁の向井とフルチンの藤堂が、白バイでどうやって街に戻ったのか誰も知らない・・・・・
つづく
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