《THPW正規軍vsブラック・パイル維新軍》はいよいよ明日に迫っていた。
救急車で運ばれていった大岩は全身に怪我を負っており、回復の目処はたっていなかった。
「黒杭のやつら、汚いことをしやがる。なんて卑劣なんだ!?」
黒杭組がこちらの戦力を削ぐために大岩を襲撃したことは火を見るより明らかだった。
長谷部から鷲号会長を通じて警察機関も動いたが、そこはさすが極道というべきか、黒杭組が尻尾を出すことはなかった。
大岩は複数の男に犯されていた。
血と精液でベトベトになった身体を、素っ裸のまま汚い毛布のようなものでぐるぐる巻きにされていたのだ。
口の中には、大岩が3人のために用意したあの青いタイツが押し込まれていた。
そのタイツにも一人分とは思えない大量のザーメンが染み付いていた。
緒方の脳裏に、3人でお揃いの青いタイツを履いて嬉しそうにしていた大岩の笑顔が焼きついていた。
「明日の試合だが・・・大岩の代わりをどうするか、だな・・・」
トレーニング・ルームで沈痛な表情で黙りこくっている緒方と朝倉に、長谷部が話しかけた。
「俺たち二人で出るよ!大岩の代わりなんていない!」
朝倉が怒ったように言う。
「どうせあっちも桐谷なんかいないも同然だしな。実質2対2だ。」
緒方も朝倉に賛成する。
長谷部は暫く腕組みをして目を閉じていたが、やがて言った。
「わかった。厳しい闘いになるかもしれないが、頼むぞ!」
「おう!」「やったろうじゃないか!」
緒方、朝倉、長谷部の3人で硬く手を握り合い、小さな円陣ができた。
その時、トレーニング・ルームのドアが開いた。
「そりゃあ無いんじゃないの?俺たちだってTHPWの一員だぜ。」
なんと、THPWのレスラーたちがどやどやと部屋に入ってきた。
「お前たち・・・」
「黒杭対策は今まで緒方たちに任せちゃってたけど、俺たちだってあいつらのことは気に入らねえんだ。」
「俺なんか、今度賭け試合するから八百長しろとか佐田に言われたんだぜ。演技派したって八百長なんかするかよ!腐ってもプロレスラーだっつぅの!」
「権田さんと大岩の敵討ちだ!」
レスラーたちが口々に黒杭への不満をぶちまけた。
黒杭への危機感が、ヒール、ベビー、ジョバーを問わずレスラーたちに連帯感をもたらしていた。
長谷部は目を真っ赤にして、うんうんと頷いていた。
「お前らの気持ちはよく解った!この中の誰が明日の試合に出てくれるんだ?」
しーーーーん・・・・
レスラーたちが急に水を打ったように静まりかえった。
緒方や権田の壮絶な試合を見てきたのだ。無理もないのかもしれない。
「いいんだ。俺と朝倉でやるよ。みんなの想いだけでスゲーありがたいよ。」
緒方が力強く言うと、朝倉も元気な声をだした。
「よし!THPW全員で円陣組むぞ!」
すると、
「ちょっと待ってくださいよ!なんで俺のことを誰も思い出さないかなー?」
声と共に部屋に入ってきたのは不破だった。
「おれだってついこの間まで現役だったんですよ。みんなに助けてもらった恩返しをさせてください。」
「だが、地下プロレスデビューの試合がこれでは・・・・」
長谷部は再び腕組みして考え込んでしまった。
緒方と、朝倉は長谷部の判断をじっと待った。
「よし・・・」
長谷部がようやく目を開いた。
「不破、行ってこい!」
「はい!」
朝倉が改めて皆に声をかける。
「よーし!今度こそ円陣だ!」
屈強な男たちが、緒方、朝倉、不破を中心に円く固まった。
「打倒!ブラック・パイル!絶対に勝つぞー!!!」
「おーーーーーっ!!!!!!」
地下深いトレーニング・ルームに野太い雄叫びがこだました。
宿舎の寝室。
緒方と朝倉は、普段とは違う昂ぶりを感じながら愛し合っていた。
「大悟・・・・イクぞ・・・・」
「ああ・・・大輔・・・中に出してくれ・・・」
「おう・・・イクぜ・・・あ、あああ、おおおおお・・・・」
「大輔・・・・ああああ・・・・・」
二人して何度果てただろう。
鍛え上げられた肉体は疲れを知らず、欲望のままに貪りあった。
真夜中過ぎ、ようやく二人は一息ついていた。
「大輔・・・・」
「ん?なんだ、大悟。」
「大輔・・・大輔に抱かれているとすごく包まれている感じがするんだ。うまく言えないけど、なんか、こう、愛されているなって・・・」
「なんだよ、急に改まって。そんなことわかっているじゃないか。」
「うん、そうなんだけど・・・。」
「どうしたんだ?」
緒方は、朝倉の瞳を覗き込んだ。
「この前の試合で、大輔が暗黒仮面を犯している時、大輔が全く別人に見えた。あれはまさに獣だった。」
朝倉の瞳には、怯えのような影と、何かわからない光が宿っているように緒方には感じられた。
「あの時は・・・暗黒仮面が俺より強いのかもしれないって思ったら、急に怖くなって・・・いや、怖くなったんじゃない・・・・俺の方がコイツより強いはずだということを証明したくなったというか・・・・実際、俺も無我夢中で、よくわからないんだが、気づいたらあいつを犯していた。」
「暗黒仮面は感じていたよ。絶対・・・・。自分より強い雄に征服される悦びを知ってしまったんだ。」
「大悟・・・・」
「すまない・・・俺は大輔に抱かれて初めて男の悦びがわかったんだ。それは本当だよ。俺は大輔を愛している。
だけど・・・」
「だけど・・・?だけど何なんだ?大悟。」
「あの時、暗黒仮面に嫉妬した。俺の知らない大輔をこいつは感じているって・・・」
緒方は朝倉を強く抱き寄せた。
「大悟・・・何を言っているんだ。あれは本当の俺じゃない。俺は獣じゃない。俺は人間として大悟を愛しているんだ。愛したいんだ。」
「大輔・・・・」
二人は明け方近くまで固く抱き合っていた。
対抗戦開始はあと数時間後に迫っていた。
つづく
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