カーテンをくぐると眩い閃光が緒方めがけて降ってきた。
それと同時に、気圧が倍になったかと思うほどの熱気に襲われる。
飢えた雄どもの咆哮に限りなく近い歓声が、鼓膜にキーンという痺れをもたらす。
今夜は緒方大輔のTHPWデビュー戦だ。
黒いタオルをすっぽりと頭からかぶっているので、その精悍なマスクは覗えない。
黒いTシャツ、そしてダークレッドのショートタイツ。
競泳パンツと見紛うほどサイドが細めのタイツを、腰履きではなくしっかりケツを覆うまで上げて履いている。
当然ハイレグ状態となり、動くたびに尻にタイツが食い込むため、
スイマーの半ケツとは逆の、ケツの下部が剥き出しになる「レスラー半ケツ」になっている。
Vラインは手入れなどしていない。雄の黒々とした繁みが堂々とタイツからはみ出している。
その中央、実に立派な膨らみは、真新しいタイツの締め付けに抗うかの如く存在を主張する、
緒方の『雄』そのものだった。
「ここでは雄であることをさらけ出すんだ!」
長谷部の言葉が脳裏に蘇る。
観客たちの視線が痛いほど股間に突き刺さるのを感じながら、緒方は数日前の長谷部の話を反芻していた。
「どうしてここに黒杭組長がいるんだ!?」
朝倉大悟の試合後に、かつての敵を目撃した緒方は動揺を隠さなかった。
メジャープロレスを去った後、裏社会に身を投じていた緒方は、ある事件をきっかけに組織に歯向かい、
命を狙われる羽目に陥っていた。
その組織というのが、先ほど会場のVIP席にいた黒杭が率いる黒杭組なのだ。
「お前さんを助けるのと引き換えに、TAPWは黒杭組と取引をした。要するに金で解決したのだ。」
長谷部が語り始めた。
「俺が実質的な橋渡しをしたわけだが、その件はきっちり解決したはずだった。
ところがこのことをきっかけにTAPWの存在が裏社会に注目を集めてしまった。
もちろんここの創設者でもあり現会長の鷲号(わしごう)も完全なカタギではないから
もともと裏との繋がりはあったわけだが・・・」
シャワールームから出てきた大悟もタオルを腰に巻いた姿で長谷部の話に耳を傾ける。
その完璧な肉体に少し心奪われつつ、緒方は話に集中しようとした。
「要するに黒杭はTAPWを賭博場にしようと目をつけたのさ。
ここでのエロくて血なまぐさい興業にギャンブルの要素を加えたら儲かるとな。
もちろん鷲号会長は断った。緒方のことは弱みでもなんでもない。
すげぇ大金をはらったんだからな。」
「申し訳ない・・・」
「そんなことは気にしなくていい。お前はこれからここで超エロくてブッ飛ぶ試合を見せてくれればそれでいいんだ。
鷲号会長もだからこそお前を拾ったのだからな。
鷲号会長は、ここの創設の理念『真の雄の開放』を貫こうとしているのだ。
確かにTAPWの試合を見るためには金がかかる。ウチも儲けなきゃな。
だが、観客が大枚をはたいて見に来るのは何のためだ?
単にエロ試合を見てオナニーするためか?そんなの今時インターネットでいくらでも見れるわな。
観客は、雄と雄のぶつかり合いを生で感じて、自分自身の雄を呼び覚ましたがっているのだ。
皆『真の雄の開放』を求めてここに集うのだ!」
今、緒方はリングの上に立ち、まさに目覚めようとしている己の「雄」を実感していた。
もうショートタイツを履いて勃起したって隠すことはない。
「見ろ!この男らしい盛り上がりを!これが俺の『雄』なんだ!」と
叫びたくなるくらい緒方は興奮していた。
リングアナがコールする。
「赤コーナー、本日デビュー戦、180cm98kg、
バズーカ緒方ー!!!」
頭を覆っていたタオルが投げ捨てられる。
単発の凛々しい面が、野獣の眼光を放っていた。
「バズーカ?」
長谷部の話を聞いた夜、地下レスラーに宿舎としてあてがわれているマンションの一室のベッドの上で、
緒方が顔をあげる。
「ああ。大輔のモノ、まさにバズーカだぜ。リングネームにぴったりだと思うがな。俺は。」
朝倉大悟が、3発出したあともまだ半立ちしている緒方の男根を弄びながら言った。
「そうか・・・?」
「大輔に突かれたら、俺の必殺『喜昇天ケツ』も役に立たないな。ははは。」
「キショウテンケツ?そんな名前だったのか、あの技は。」
ちょっと間抜けなネーミングだな。と思いつつ口に出さずにいると、
「バカっぽいと思ってるだろ?」
とふざけて緒方にヘッドロックをかけてくる朝倉。
「それより、長谷部のおっさんの話・・・ちょっとヤバい感じだな。」
「ああ・・・」
黒杭組の地下プロレスギャンブル化構想。
鷲号会長はにべも無く断ったのだが、しぶとい黒杭組長はある提案を持ちかけてきたという。
それは、黒杭組からレスラーとして人材を派遣したい、というものだった。
魂胆はわかっている。
現THPWのレスラーを潰していくことで団体の乗っ取りを謀ろうとしているのだ。
その黒い腹が読めるからこそ、鷲号会長は申し出を受けて立たざるを得なかった。
「まさかおたくの所属レスラーが、いかに極道とはいえ素人に負けたりはしないでしょう?」
こう挑発されて、受けて立たなければどんな中傷を流されるかわかったものではない。
それにTHPWを諦めたとしても、黒杭組独自で地下プロレス団体を発足するなどということになったら、
商売敵同士ということで、今後の運営に支障をきたすことは間違いない。
(今のうちに悪い芽は摘んでおいたほうがいいのかもしれないな・・・)
鷲号会長は決心した。
黒杭組から送り込まれてくるレスラーに勝ち続けることだけが、THPWの生き残る道なのだ、と。
そして今、緒方と対峙しているレスラーが、まさに黒杭組からの第一の刺客なのだ。
コールが始まった。
「青コーナー、こちらも本日デビュー戦、ブラック・パイル所属、178cm80kg
スコーピオン桐谷ー!」
ガウンが投げ捨てられると、ムエタイ仕様のサイドに大きく切り込みの入ったトランクスを履き、グローブをつけた筋肉質の肉体が現れた。
胸元にリアルな赤いサソリの刺青が掘られている。
「桐谷・・・・」
「久しぶりっすね。緒方さん。あんたがまだ生きてるなんて奇跡だな。」
(相変わらず不快なツラだぜ)
絶対に笑うことのない真っ黒な心の持ち主が、笑顔の形に表情筋を無理矢理固めたような嫌な表情、
桐谷の顔は常にそうだった。
それが見るものに底知れぬ不気味さを感じさせることを奴は知っていた。
「知ってました?俺は元キックボクサーなんっすよ。対戦相手を殴り殺しちゃったもんで極道やってるんすよ。」
「どっかで聞いたような話だな。ボクサー崩れが裏社会に堕ちるってのは。」
桐谷の張り付いたニヤケ面が一瞬強ばったような気がした。
「あんた、殺す・・・」
ゴングの直前、桐谷のつぶやきが緒方にも聞こえた。
試合開始早々、桐谷はスパートをかけてきた。
緒方よりも一回り小さい身体から、予想もつかない角度でパンチやキックが繰り出される。
「大輔、間合いに気をつけろよ!」
セコンドから朝倉が声をかける。両隣には長谷部と、宿舎で仲良くなったレスラーの大岩瞬が試合を見守っている姿が見える。
(こいつ、意外と本格的だな。)
緒方は桐谷の攻撃を素早くかわしながら、まともに食らったら受けるであろうダメージを計算していた。
桐谷の回し蹴りが空気をつんざきながら空振りしたタイミングで、緒方が軸足を払った。
尻餅をついて倒れた桐谷に、すかさずキーロックを極める。
「ボクサー崩れさんよ、思ったよりいいセンスしてたが寝技には手も足も出ないだろ?」
「ぐわっ・・・・」
経験したことのない腕のきしみに桐谷が苦悶の声をあげる。
会場に設置された大型スクリーンに、ニヤケ面をかなぐり捨てた桐谷の表情が映し出される。
カメラは全部で3台。リングの天上に固定された1台、本格的な機材を担いだカメラマンが二人。
地下限定のDVDとして販売するのだ。もちろん法外な値段で。
緒方はキーロックを外すと、桐谷の腕を抑えたまま倒立し、高い位置からのダブルニーを叩き込んだ。
「ぅぎゃーっ!!!」
2発、3発と膝を落とす。これで桐谷の右は攻撃力をかなり失ったはずだ。
「緒方、いいぞ!」セコンドからの声に顔を上げると、
緒方の視界に、VIP席に今日も陣取る黒杭会長の姿が入った。
憎しみの感情が湧き上がってくるのを感じながら、緒方はさらに桐谷を責めにかかる。
「親分が見てるぞ。お前破門だな。こんなにやられたらな。」
今度は脚を取ると一気に逆エビ固めだ。
「あががが・・・・」もはや満足に声もだせない桐谷。
緒方の男根は痛いほどいきり立っていた。
大型スクリーンに、勃起した男が筋肉を盛り上がらせながら相手の背骨を折ろうとしている姿が映し出される。
緒方はそれを見て、自分の雄力の美しさ、気高さに酔っていた。
「そろそろ地下プロレスっぽいのも見せなきゃな。」
がっちりとホールドしていた両足の片方を解くと、片逆エビのまま桐谷のトランクスの裾から手を入れる緒方。
「あれっ、縮こまっちゃってるぞ。だめだめ、地下プロレスではやられたらさらに勃つくらいじゃなきゃ。」
緒方は片エビを外し、うつ伏せに伸びている桐谷のパーマのかかった茶髪を掴み、膝立ちにさせた。
髪をつかんだまま正面に立つと、おもむろに客席を見回す。
大歓声を受けながらたっぷり間を置き、最後に黒杭組長をひと睨みしてから、
緒方はタイツの脇から男根を取り出した。獣じみた巨根!
「バズーカ!バズーカ!バズーカ!」一斉コールが巻き起こる。
「桐谷、貴様には地下プロレスは無理なんだよ。俺のハイパーマラビンタを喰らえ!」
凄まじい勢いで緒方の勃起チンポが桐谷の顔面に打ち付けられる。
あまりの速さに巨根が見えないほどだ。
バチバチバチバチバチバチ!という音が会場に響き渡る。
何百発というマラビンタを食らい、顔を青黒く腫らした桐谷は、緒方が髪を離すとドサッと音を立てて崩れ落ちた。
緒方は勃起した男根をタイツにしまい、ガッツポーズで声援に答える。
そして黒杭組長を見据えると、(もう俺にかまうな!THPWから手を引け!)と
心の中で叫んだ。
無表情で緒方の視線を受け止めていた黒杭組長の目が、一瞬光ったような気がした。
「危ない!」朝倉の声が飛んだ。
その直後、緒方は全身に凄まじい衝撃を受けて膝を崩した。
「おあっ!」
振り向くと這いつくばったままの桐谷が、スタンガンを緒方のふくらはぎに押し当てている。
「なっ・・・・」何をする、と言おうとして、2発目の電撃を食らい、たまらずダウンする。
「よくもやってくれたな。緒方さんよ、倍返しじゃすまんよ・・・・」
ヨロヨロと桐谷が立ち上がる。
「あんたがいい気分でポーズ付けてる隙に、コイツを渡してもらったのさ。」
黒杭コーナーにセコンドとして付いている目つきの悪い男達が見えた。
「くそ・・・迂闊だった・・・」
相手は極道だ。卑劣なことをさせたら奴らにはかなわない。
まだふらふらしながら桐谷がスタンガンをかざす。
「こいつはただのスタンガンじゃないぜ。拷問仕様の特注品だ。いくら強いプロレスラーさんだってイチコロなのさ。」
近寄ってくる桐谷から、匍匐前進で逃れようとする緒方。
しかし身体に思うように力が入らない。
たちまち桐谷に追いつかれ、背中を踏みつけられた。
「楽しませてもらうぜ、緒方さんよ。」
桐谷は緒方の脇腹を蹴り上げると、仰向けにさせた。
力の入らない緒方の左足を、両膝で押さえつけ、左手でもう片方の脚を持ち上げた。
桐谷に大股開きを晒す格好で動けない緒方。
「地下プロレスっぽいってのは、こういうことかい緒方さん?」
桐谷はスタンガンを緒方の急所に押し付けた。
「ぐごぉがぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
緒方のすざまじい絶叫とともにタイツの焦げる匂いが立ち込める。
金玉から全身に駆け抜けるあまりに激烈な衝撃に、緒方の視界は白く霞んでいった。
「ぅがっ・・・・おあ・・・がああ・・・・!!!」
つづく
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これから緒方がどんなふうに陵辱されるのか楽しみです。
思い切り悶絶させてください。
応援しています。