俺は地元じゃちょっと知られた男だぜ。
牛の扱いにかけちゃ誰にも負けない。
「弱気を助け強きをくじく」をモットーに、地域のアニキ的存在だ。
週末には、プロレスラーとして村の体育館のリングに上がる。
子供たちは俺のクリーンなファイトを見て、正しい生き方を学ぶのさ。
海パンを改造した自作のショートタイツがイカすだろ?
今日は西の農場のヤサグレ野郎との対戦だ。
奴とは牛の品評会をめぐってもめたことがある。
いい機会だ。白黒つけようじゃねぇか!
俺は奴の汚い反則にも耐え、正々堂々レスリングで勝負した。
勝利は目前だった。会場が最高潮に盛り上がる。
ところが、土壇場になって奴の双子の弟が出てきやがった。
双子の息の合った攻撃に、俺はぶちのめされた。
リングでダウンしたまま立ち上がれない俺に、
「ヒーローさんよ、ザマぁねぇな~。これでみんなも解っただろう。俺たちが村で一番強いってな。もうデカい面するんじゃねぇぞ!」
双子はあざ笑うかのように吐き捨てると、意気揚々と会場を出て行った。
青パンツ一丁で無様に横たわる俺はあまりに惨めだった。
完敗した俺に向けられる子供達の視線は、哀れみを帯びていた。
村のパワーバランスが変わった・・・
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